二十三日目
赤司は基本的に整理整頓というものを心がけているので部屋が汚くなるということはない。ただ少し乱雑になっていた本棚の中身を揃え、起き抜けになっていたベッドをきっちりと直す程度。隣の紫原の部屋からはガタンゴトンと何を動かしているのか分からないような音が聞こえてきて溜息をつきたくなる。時間はほとんど二時間まるまる残っているようなもので、コーヒーでも飲みながら待とうとキッチンへ降りていくと、そこには同じように時間を持て余したらしい緑間がいた。
「僕の分もコーヒー入れてもらっていいかな」
「…ブルマンサントスでいいか」
「ああ、かまわないよ」
そういえば最近は赤司がモカブレンドを買い、緑間がブルマンサントスを買い、黄瀬がブルーマウンテンブレンドを買っていた。黄瀬はコーヒーの銘柄というものに詳しくなかったらしく、いつも緑間が飲んでいるからと買ってきてくれたらしいのだが、緑間はあまりブルーマウンテンが好きでなかったのでいつもカフェオレにして飲んでいた。そいういうところ律儀である。
そこから三十分もしただろうか。片付けが終わったらしい黒子もリビングに降りてきた。
「はやいな」
「赤司君に言われたくないです。僕はものが少ないので」
「そう。コーヒー飲むかい?」
「僕苦いのだめなんですよ。カフェオレとかならすきですけど」
「ドリップしたのがポットに入ってるから、それでつくればおいしいよ」
「そうですか。ありがとうございます」
ダイニングキッチンで三人がコーヒー片手に雑誌を開いてみたり、小説を開いてみたり、テレビをつけてみたりしている間にも、二階の他の部屋からはガタンゴトンと音がしたり、掃除機をかける音がしたり、なにかに躓いたのか大男がスッ転ぶ派手な音がしたりしている。
「床へこまないですかね」
「まぁ大丈夫だろう」
「まったく、普段から人事をつくしていないからこういうことになるのだよ」
二時間が経とうとするあたりになっても他三人は部屋から出てこず、一体部屋の中はどうなっているのだと。随分突っ込みどころの多い部屋点検になりそうだ、と、赤司は頭の痛くなる思いがした。
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とりあえずの小休止。
ちなみに部屋は右から
赤司、紫原、緑間、黄瀬、青峰、黒子の順番で並んでる設定です。