四日目





さてそれぞれの荷物がすべてとどき、引っ越しもようやく全て終了したあたりでいよいよ入学式。入学式は大学ではなく少し離れた都営ホールで行われる。シェアハウスから大学までは自転車で15分程度、速足に歩けば30分かからない程度とわりかし近かったが、都営ホールまでは電車で行かなければならない。また大学の入学式はスーツ着用であり、案の定スーツを持っていなかった紫原と青峰は前日にいそいで紳士服専門店に行かねばならなかった。基本的に特注のくせに紫原は呑気である。それでもどうにか入学式には間に合い、キセキの面子はそれぞれスーツに着替えているところだ。

「紫原、ネクタイがこんがらがっているのだよ」
「えーいいっしょ」
「だめなのだよ。ほら結び直してやろう」

緑間はぐちゃぐちゃでなんとか体裁を保っているだけだった紫原のネクタイをきっちりと結び直した。よく見るとスーツの丈が色々と足りていなくて、ずぼらな印象が強かった。髪を後ろで纏めてやればどうにか体裁は保たれたが、後ろから見ていた赤司には色々と気になるところがあるらしい。少し不満なような、もうすこしどうにかならなかったのか、という目を紫原に向けている。紫原はというとそんなのはどこ吹く風で、「まあ体裁整ってればいいんじゃない」とそんな調子だ。

そんな赤司はというと、他よりもワンランク上のスーツなのか、体のラインにきっちりと沿った品のいいスーツだった。ホコリもシワもなくすっきりと着こなしている。高いと一目でわかるネクタイピンと時計も助けてか、いかにも御曹司という格好でこれは女子の目を引くだろう。

ちなみに黒子は可もなく不可もなく、良く言えば無難で悪く言えば地味だった。いつも通りである。ネクタイも中学時代のときの結び方を覚えていたらしく、少し手間取った形跡があるが、きちんと結べている。むしろ紫原は高校でもネクタイだったろうになぜ結べないのか。毎朝某氷室が手伝っていたのかもしれない。過保護な彼のことだから充分あり得るのが怖いところだ。

「なんか緑間はサラリーマンみてーだな」
「そういう青峰はヤクザかチンピラなのだよ」
「うるせーな」
「本当のことを言ったまでなのだよ」

緑間はあんまりにも落ち着きすぎていたためにくたびれたサラリーマン風で、青峰はスーツなのに何故か漂うだらしないオーラと持ち前の目付きの悪さでサングラスでもかけようものならヤクザの出来上がり、という風貌だった。どちらも悪い意味でスーツが似合っている。

「もー青峰っちネクタイ緩めちゃダメじゃないっすか!!こういうときは一応式が終わるまではちゃんと結ぶもんすよ!!」
「うるせーよ駆け出しホストが」
「ひどい!!なんで駆け出しなんすか!!ナンバーワンっすよ!!」

見当違いなつっこみをする黄瀬のスーツ姿はモデルだけあって流石にこなれていた。細身のスーツをきっちりと着こなし、ネクタイピンもセンスがよく、選んだ靴にもこだわりが感じられた。髪はいつもよりきっちりとセットされており、時計はブランド物ではなかったが今風で、全体的にセンスがよかった。だがそれによってなのか黄瀬のわんこオーラのせいなのか、フレッシャーズの雰囲気というよりはホスト的な雰囲気が漂っている。格好はいいといえばいいのだが、ダンディーなとこが欠片もないせいで駆け出しホストというあだ名がぴったりだ。


「おい、そろそろ出ないと電車の時間におくれるのだよ」

緑間が時計を確かめそう言うと、全員が財布やらなにやらをひっつかみ、紫原はお菓子を大量に抱え込んで赤司にやんわりと叱られていた。黒子はとりあえず今日一日は他人のふりをしようと決め込んだ。こういう式典では目立たないにかぎる。

「さぁ、行こうか」

赤司様の一声で今日もキセキは出発進行。道中もにぎやかで、入学式が思いやられた。


END


入学式はちゃんと聞く派が赤司、緑間、黒子で、寝る派が青峰、黄瀬、お菓子食べてるのが紫原。
入学式の話は特にネタがないので書きません。
次あたりからやっと大学生生活スタートってことで。


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