十八日目




リビングで法学の参考書を読みながら、赤司はどろりと重たい眠気を感じた。そういえば昨日はバスケ部の練習メニューを練っていて寝るのが遅かったうえに1コマから講義が入っていた。レポートを今週中に提出しなければならないのだが、眠気に圧されてあまり集中できそうになかった。自分の部屋で寝てしまうと、そのままずるずる惰眠をむさぼってしまいそうだったので、赤司は参考書を閉じ、ソファに横になった。少ししたら自然と目が覚めるだろうと高をくくり、瞼を落とす。そうして赤司は暖かな午後の陽気に沈むように、思いがけなく深い眠りに落ちた。

黒子と青峰、黄瀬帰宅したとき、部屋は静まり返っていた。誰もいないのだろうかと黒子は思ったが、玄関のカギは開いていたので、誰かが閉め忘れたのでなければ中に人がいるはずだ。もしかしたら、ということもある。黒子は黄瀬の口をふさぎ、青峰に先に入るようお願いした。俺は生贄か、と青峰は渋りながらも、たしかにこの中なら一番腕っ節はいいか、とそろりそろりリビングをのぞきこむ。そうして、ソファのあたりに誰かが寝ているのを確認し、少しだけ纏っていた緊張をするりと脱いだ。後ろの黒子と黄瀬に、ソファ見てみろ、とささやく。青峰自身かなり驚いたのだが、そこに寝ていたのは赤司だった。同様に黄瀬と黒子も目を見張り、顔を見合わせる。

「…めずらしいですね」
「だろ?」
「このままじゃ風邪ひくっすよ。なんかかけるもの持ってくるっす」

黄瀬がそろそろと自室に戻り、毛布をそっと赤司にかけてやる。そうして一息ついた時、青峰が気の抜けたあくびをした。

「なんか俺も眠くなってきたな」
「奇遇ですね」
「今日あったかいっすからね」

俺も寝よう、と青峰が残っているソファに横になる。あ、ずるいっす、と黄瀬が講義するが聞く耳持たない。しかし黒子が「僕もソファがいいです」というと、しかたねぇから半分貸してやるよ、と身体をずらすのだから世知辛い。黄瀬は半泣きになりながら、クッションを敷き詰めて床に転がった。不貞寝である。すぐにとろりと暖かい眠気が流れ込んできて、三人とも浅いようで深い眠りについた。

緑間と紫原が帰宅したのは三時近くになってからだった。玄関を開けても物音がしない。みんな先に帰っているはずだが、と緑間は首をひねるが、リビングを見てああ、と納得した。めずらしく赤司がソファでうたたねをしていて、黒子と青峰が窮屈そうにその隣のソファで爆睡していた。床には黄瀬が転がっていて、これはきっと不貞寝だろう。

「みんなでお昼寝とかいいなー俺も毛布持ってきて寝よー。みどちんもなんか持ってきなよ」
「俺は眠くなどないのだよ」
「嘘、昨日徹夜だったくせに」
「なぜ知っている」
「クマすごいもん」

たしかに緑間は重たい眠気を感じていたが、ここでベッドに入ってしまえば夜眠れなくなるのは目に見えていた。だからまぁリビングで昼寝するのも悪くないか、と毛布を引っ張り出す。紫原が赤司の近くを陣取ってしまったので、緑間は仕方がなく黄瀬の隣に転がった。180越えの男が四人も転がっていると随分リビングが狭く感じる。紫原はすでにすーすーと寝息を立てており、それを聞いているうちに緑間の瞼も自然と落ちた。


赤司が目を覚ました時、時計は四時を指していた。目を閉じたのが二時頃だったので、思ったより眠っていたらしい。どうして寒くなかったのだろうと起き上ると、誰かがかけてくれたらしい毛布が目に付いた。それから床に転がる紫原と黄瀬、緑間に、ソファを占領している青峰と、追い出されて転がり落ちたらしい黒子も視界にはいる。どうしてこうなった、と苦笑しながら、赤司は静かに参考書を開いた。みんなを起こしてしまわないように、細心の注意を払って。


END

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