二日目





さて現実的な準備が整ったところで、まずはシェアハウスに引っ越しをせねばなるまい。赤司は早々に引っ越しの準備に取りかかった。といっても実家においてある最低限の衣服と身の回りのもの程度を持ち込み、あとはどこぞのインテリアショップで家具を揃えればよいのでわりかしスムーズにことは運んだ。引っ越し前に緑間がシェアハウスの床という床に磨きをかけてくれたおかげで掃除はしなくてよかった。元より新築の物件だ。買った家具はベッドを除いて翌日配送してもらう手筈になっていたので、赤司の部屋には大きめの段ボールが3つとベッドがあるだけでこざっぱりしている。明日になれば家具が届くので、それを組み立て、荷物を収納すればそれで終了だった。黒子と緑間も荷物は少なく、早々に引っ越し作業を終えて共用リビングに降りてきていた。まだ我が家という実感がないのか、外着のままそわそわと落ち着かなくはしていたが。問題は他の三人である。

黄瀬はとにかく荷物が多かった。ファッション雑誌に大量の衣類に靴に雑貨に美容健康グッズ。ドン・キホーテ顔負けの品揃えで、それは大型トラックがパンパンになるほどだった。黄瀬は家具も実家から持ち込んだので、収納には事欠かなかったが何せ荷物が多い。何回も一階と二階を往復し、部屋に入りきらない段ボールで廊下を通行不可能な状態にまでおいやった。また細かいものが多いため片付けはなかなかに捗らず、見かねた黒子が手伝いに行ったほどだった。とにかく物が多い。

また青峰にいたっては整理整頓能力というものを人生のどこかに置き忘れてきたらしく、ぐちゃぐちゃにものが詰め込まれた段ボールを五つ転がし、途中であきらめたのか、コンビニで買ってきたグラビア雑誌を捲りながら耳を掻いている。そこは赤司がハサミを片手に微笑んであげることで青峰のやる気を無理矢理引き出し、さらに緑間が持ち前の几帳面さでもって青峰の荷物を整理し、一つだけ持ち込んでいたシェフにどうにか詰め込んだ。足りない家具は赤司監督のもとネットで注文させ、とりあえず引っ越し完了。大雑把にもほどがある。

一番酷かったのは紫原である。なんだかおかしいと気付いたのは緑間で、聞いてみるとベッドしか運んでいないとのことだった。緑間が着替えも身の回りのものも持たないでどうするつもりなのだと問えば、えー持ってくるのめんどーだしなんとかなるっしょーとなんとも大胆な発言。こうなると思った、と赤司が紫原を買い物に連れ出し、とりあえずの着替えと洗面用具だけ買い与え、紫原の実家に連絡をして手早く荷物の配送を手配した。紫原は赤ちんすごーいと他人事。うまい棒の食べかすがせっかく磨いた床に降り注ぐ。自分のことなのに全く。

全員の引っ越しが終わるころには日はとっぷり暮れるどころか真夜中にさしかかっていた。いくぶん疲れた顔の緑間が引っ越し蕎麦を茹で、夜食にと振る舞った。ほんとうは蕎麦は近所に配るのがふつうなのだが、学生の引っ越しでそんなことをしてもご近所さんもどうしていいかわからないだろう。しかし引っ越しと言えば蕎麦だ、と相場が決まっているので仕方がないから自分たちで食べた。とてもおいしかった。緑間は案外料理ができるらしい。そうしてよし風呂に入って寝ようという時になってまた風呂の順番で揉めるわけだが、それはまた別の話。


END


絶対青峰と紫原の部屋は汚くなる

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