それはきっといつか知らなければいけないことだった







※高杉死ネタ













「なぁ高杉暑いなぁ。今日は何人死ぬだろうな。おまえはきっと俺の知らないとこで死ぬんだろうな。知らないとこでわけわかんない理由で、わけわかんない勢いで死ぬような気がするよ。んで、俺は多分死ぬまでお前が死んだこと知らないで死ぬんだろうな。やっぱり俺のが長生きはするだろうな」

銀時がぱちりと目を覚ますと体中に嫌な汗をかいていた。熱中症寸前で、布団がずっしりと湿っているのがわかる。ガンガンと頭が割れるように痛かった。懐かしい夢だ。あの日も今日くらい暑くて、もしかしたらそれ以上に暑くて、暑過ぎて多分頭がおかしかったのだ。高杉はなんと答えたのか、思い出せない。クーラーのない部屋は殺人的に蒸し暑かった。かといって窓を開けても風がないので効果がない。むしろ贅沢にクーラーをつけている糞野郎どものおかげで排熱がそこかしこにわだかまっている。エコの精神はどうしたとこういう時だけ問いただしたくなる銀時であった。

銀時は暑い夏が嫌いだった。作物の成長がだとか環境問題だとか、そういうことはとりあえず置いておいて、冷夏がずっと続けばいいと思っている。なのに冷夏には「夏は暑くないといけねぇよ」と愚痴をこぼすのだから救えない。今日はどうしようもなく暑い日だ。熱中症で何人か死んでいてもおかしくない。夏は本気で人類を駆逐しにかかっている。そう思えるほどに、暑かった。暑過ぎて椅子に座っていられず、床に転がる。新八と神楽はどこかに行ったのか物音はしない。セミの鳴き声が響く。何匹か7日間待たずに死んでくれないか、と残酷なことを考えながら、そのセミの何百倍何千倍もの人生を無駄に浪費している。情けないことこの上ない。

床の冷たさにぼんやり視線をめぐらすと、ベランダから陽炎がたちのぼるようだった。視覚的に大変暑苦しい。カーテンがゆらゆら揺れて、ああ風か、と思うが待望のそれは一向に銀時までたどり着かなかった。おやおかしい。さらにこの部屋にカーテンなんて高尚なものは存在しない。ならばゆらゆらしているのはなんだ。

なんだかゆらゆらしている着物の柄が変に派手だ。ああ、と思った時に今朝の夢を思い出して、銀時は目を閉じた。知らなくていいことは世の中にいくつもあったからだ。

「そんなお前の都合のいい死に様はしてやらねぇよ、死んでもな」

あの日高杉は確かにそう答えた。


(八月十四日午後二時くらいのこと)

END


title by 彼女の為に泣いた

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