十一日目





黒子はよりによって雨の直前に洗濯をしてしまった。その次の日も次の日も雨で、当然のごとく洗濯物は乾かず、練習着はなくなり、さてどうしよう、と乾かぬ洗濯物の前で腕を組んでいた。部屋干しと生乾きの香りが鼻につく。そうしていたら赤司が「なにかあったのか」と声をかけてきた。黒子が事情を説明すると、赤司は「なんだそんなことか」、と。

「それなら僕の練習着を貸してあげるよ」
「え、いいんですか?」
「かまわないさ」

それならば、と黒子は赤司の言葉に甘えて彼のシャツを借りることにしたのだが、着替えてみるとなんだかおかしい。赤司がいつも練習で着ているなんてことはないありふれたスポーツ用の黒いシャツなのだが、あまり黒子の体型に合っていないようだった。黒子と赤司は身長はそう変わらないのでそんなにサイズの心配はしなかったのだが赤司のほうが肩幅や胸囲があるのだろう、わずかながら黒子の体躯では着られてる感が否めなかった。改めて赤司の体をしげしげと観察すると、薄っぺらな黒子の体とは違い、肩幅がしっかりとし、さらにしなやかな筋肉がついている。隙間なくびっしりと鍛え上げられていて、そこには一部の妥協も見受けられなかった。

「少し大きいかな」
「そうですね。あまり体型は変わらないと思っていただけにショックです」
「五センチの差は大きいからね」

それだけではないだろうと思ったが、口にしてしまうとなんだか僻みに聞こえてしまいそうだったので、黒子は言葉を変え、「それに赤司くんは男のひとの体つきをしていますから」と言った。すると赤司がなんだか驚いたような顔つきになり、そのあと変な表情になった。

「テツヤ、そういうことはあまり言うものではないよ」

黒子はどうして赤司がそんなリアクションをするのかわからなかった。とりあえず話題を変えようと「なんだか赤司くんの匂いがします」と言ったのだが、赤司はまたしても悩ましげな顔をするのだった。黒子の考えていることは今一つ読み取れないときがある。まるで天気のように。外はざあざあと雨が降っていた。困ったものだ、と、赤司は今日のメニューを頭の中で組み立てながら、こっそりと溜息をついた。


END


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