十日目





「困りました」

朝、黒子は駐輪場で立ち往生していた。近くのアパートやマンションと共用の駐輪場にいつものように自転車をとめていたのだが、それがないのだ。昨晩うっかり鍵をかけわすれてしまっていたのだが、まさかこんなに鮮やかになくなってしまうとは夢にも思わない。

「黒ちんどうしたの?」

ふと振り返ると紫原がいた。そういえば紫原も今日はこの時間から講義だった。

「自転車を盗まれてしまったみたいで」
「えーいるんだね、そういうひと」
「僕も鍵をかけわすれてしまったので」
「盗む人が悪いんだよ。そういうのは」

自転車は多分返ってこないだろう。返ってきても近所にそういう人がいるというのがなんだか切なくて、嫌な気分になった。

「今日は歩きだね」
「遅刻決定です」
「なんならのんびり散歩してけばいいよ」
「そうします」

黒子が諦めててくてく歩き出すと、後ろから紫原もてくてくとついてきた。え、と黒子が振り返ると、紫原はなんでもないような顔をしている。

「紫原くん、君は自転車がありますよね」
「うん」
「講義に遅れてしまいますよ」
「いいよ、別に。赤ちんにだけ内緒にしてくれれば」
「…ありがとうございます」
「いいよ、講義めんどくさいし」



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なんだかんだ赤司にバレるけどなんにも言わない赤司様素敵。
後日チャリはちゃんと返ってきましたとさ。
尻切れトンボですみません。




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