alcohol 9%





なんだかもう眩しいくらいだ。

「奥村君てさ、酒飲んだりせんの?」
「ねーよ。未成年じゃん」
「飲んでみたいとは思わんの?美味しいよ」
「お前飲んでんだ」
「まぁたしなむ程度にね」

燐の回答はどこまでもどこまでも廉造の期待と予想から離れて思わしくないものに変わっていった。廉造は別に少なからず侮蔑を含んだ目で見られたかったわけじゃない。勝呂も酒は嫌いだった。つまらないなぁと思う。燐もそうだった。だのに彼の場合は少しうっとうしくすら感じた。自分とは全く違う生物なのだなぁと思う。悪魔は酒が好きだと思っていた。だがワインを盗んでいくのはいつもがめつい天使どもだ。

「酒好きな人は嫌いなん」
「そういうわけじゃ、ねーけど」
「奥村君は真面目やね」

つまらんわ。語尾を少々隠しただけで、ほら、すぐに優越に溺れる顔になる。いつもそうだ。真面目なのと世間知らずは紙一重だというのに、不真面目な世間知らずも真面目と誉めれば手前の株は勝手に上がる。廉造はそういう、言葉の扱いが得意だった。相手がどんな言葉を欲しがっているのか、どんな言葉を使えばどんな印象を与えることができるのか、手に取るようにわかる。

「つまらんわ」
「え」
「なんでもない」
「ならいいや」

廉造はどうしても燐を傷付けてしまいたかった。彼といると手前が悪魔よりもずっといやらしく、惨めで、賎しい人間なのだと嫌でも思い知らされる。

「志摩はさぁ、色々知っててすげぇよなぁ」
「そうでもないよ」

ああ、もう眩しい。熔けてしまいたいくらい。


END






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