三番目の男
結局は三番目なのだ。
ヴォルフラムは絵を描くのが好きだ。最近は抽象的な絵ばかり描いている。写実は好きじゃない。現実をありのままに写したとて、それは理想の変型である。また愛した男を描くなら抽象的な方がよい。彼を写実的に描くとしたならばあの目の輝きと内面の美しさを如何様にして表現すべきか。愛した男を描くなら抽象的な方がよいのだ。
「なぁ、なんかヴォルフの絵って、なんか悲しいな」
それは手前が有利と手前を描いた絵なのだ。ヴォルフラムは不意をつかれて言葉につまった。その絵にはビリジアンの背景に男が二人異様な風貌で描かれていた。
「それくらいしかわかんねーや。普通に描けばうまいのに、なんでこんなのが好きなわけ?」
「ユーリはへなちょこだからな。抽象画の良さなんぞわかるまい」
「へなちょこ言うな」
赤面する思いであった。ビリジアンの海に溺れるのは手前だけなのだ。彼は、彼は。
愛した男を描くなら抽象的な方がよいのだ。彼が誰を見詰めていようと、誰を信頼していようと、それを隠して手前を見詰める。
END
ヴォルユってか、ヴォル→ユ→コン
ちなみに村田が親友なのでヴォルフラムの順位は三番目ってことで