ホームシック





高校の物理で星について勉強した。村田も前世に天体観測が趣味な人がいたみたいで詳しかったからナイター観戦後に空が見えるところまで行って(まぁ学校のグラウンドなんだけど)春の星座から夏の星座には少しだけ詳しくなった。ほらあれがデネブ、アルタイル、ベガ、君の好きな物語かよとツッコむのも忘れない。学校のグラウンドからだと周りが眩しすぎて一等星二等星くらいしか見えない。なぁ、今度星がいっぱい見えるところに行こうぜと村田に言ったら「あっちの世界があるじゃない」と言われた。ああ、そうか。

その二週間後くらいにスタツアした。俺は書類にサインするだけの簡単なお仕事を終えてから、ひんやりと冷たい夜の中に出た。コンラッドが一緒だった。俺はこないだ村田に教えて貰った知識を披露しようと夜空を見上げて、唖然とした。

「コンラッド、空、すごいよ」
「ええ、今日はよく晴れてる」
「すごい」

空にはびっくりするくらい沢山の星が散らばっていて、その一つ一つがキラキラ輝いていた。どれが白鳥座だろうどれがこと座だろう、どれが、どれが。俺は必死に春の大曲線やら大三角やら逆ハテナを探したのだけれど、一向に見つからない。それもそのはず、こっちの世界とあっちの世界では星の位置が違うのだ。さらには惑星も違うし等級も違う。唯一同じなのは月が綺麗なことだけだ。コンラッドがあれが何座でこれが何座なんですよと神話まで懇切丁寧に教えてくれたけれど俺はどうして「それは誰に聞いたんだ?」なんてひねくれた質問しかできなかった。コンラッドは、ただ、笑った。俺は無性に寂しくなって不安になって、部屋に帰ってバスタブに頭まで浸かってみたけれど結局、俺の知らない世界から抜け出すことはできなかった。消えてしまいたいくらい、恥ずかしくなっただけだった。

END



星の話が好き





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