まるで恋心のようだね






静雄は髪を脱色するのが好きだった。二週間に一度は脱色している。そのくせケアはサボるものだから、彼の髪は痛みきっていた。以前あんまりにもブリーチをかけ過ぎて、髪が溶け始めたことがある。その時は一週間に一度の頻度でブリーチしていた。髪を引っ張るとゴムのように伸びて、簡単に千切れてしまう。これはいけないと思い、1ヶ月ほど脱色を諦め、その後二週間おきに再開した。それでも随分頻繁なので髪の先端はパキパキと折れるほどには痛んでいる。特にブリーチしたての日は髪全体がバッキバキになっていた。けれど静雄は痛みきった自分の髪が大好きだった。鏡の前に立ってみたり、髪に指を通した時に「ああ傷んでる」と実感する時、静雄は途方もない充足感に支配された。

「ちょっとは労ってやれよ。年取ってから後悔すんぞ」
「そん時は潔くスキンにします」
「うん、まぁお前がいいならそれでいいんだけどな」

あーあ、とトムは静雄の髪をパキリと織り込む。ブリーチした翌日のことだった。いつも以上にパサついてどうしようもない髪を、トムだけが労るように触れる。それだけでよかった。静雄は懲りもせずに、まるで中毒患者のように脱色し続けた。髪の根元が黒くなるのが許せなかった。そうして伸びたそばから脱色して、満足する。けれど静雄の髪は伸びたそばからパキパキ折れた。それでよかった。


END







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