水がたまって、どんどんたまって、あふれてなんていない




その本丸に顕現した蜻蛉切は、なにがどうなってそうなったのか、女の姿をとっていた。ぶわりと舞った桜が晴れた頃、その蜻蛉切自身も、困惑を隠せない表情で、審神者と、その時近侍であった同田貫を見た。その時の同田貫の、残酷なような、興奮を隠せないような、そんな表情を、蜻蛉切は忘れられないでいる。憮然としていたがあれは、獲物の喉元に食いつく寸前の、獣のひとみだ。
蜻蛉切の姿は、戦装束では豊満な胸を隠しきれず、裸体はうつくしい曲線を描いていた。身長だけは女にしてはやけに高く、小狐丸や山伏と肩を並べるほどであった。が、筋肉のかわりに、ぽってりとした脂肪が全身を取り巻いていて、話にならない。腹の真ん中を縦に一本筋が通る程度に筋肉はあったし、くびれるところはくびれていたが、この本丸で一番練度の低い日向政宗と手合わせをしてみても、全く歯が立たなかった。短刀の膂力にすら劣り、鈍足で、なにより戦というものを好まない。馬当番も、畑仕事も、男どもに比べれば全くの出来損ないで、蜻蛉切は顕現して幾日かたった後、審神者に「どうか、どうか、自分になにかの役割をくださいませんか。どのような非情なものでもかまいません。戦でも内番でも役に立たないこの身が役に立つのであれば。……それがないというのであれば、どうか、どうか刀解してください。もう、もう、どうしようもないのです。どうしようもなく、我が身が嘆かわしいのです」と、嘆願した。審神者は少し考えたのち、涙を流さんばかりの蜻蛉切に「では、子を孕め」と、短く言った。
審神者は別段、期待などしているようではなかった。ただ、面白いことが起こればそれでよし、という考えのもと、そう提案したらしかった。この本丸で一番の練度を誇る同田貫正国とまぐわい、子供を作れ、と、それだけを蜻蛉切に伝えた。蜻蛉切はさっと青ざめたが、しかし、気丈にも、「かしこまりました」と、その命令を拝領した。
ことはその日のうちに行われた。蜻蛉切が男どもに混ざり湯を浴びて、身体を清め、自室に戻ってすぐに、戦帰りの同田貫が甲冑だけ外した格好で蜻蛉切の部屋へ入ってきた。
「なぁ、俺ぁあんたのこと、すきにしていいってぇ、審神者に言われてんだ。あんたも承諾したんだな?じゃあいいよなぁ、何したって。……いやさ、御手杵やら、宗三やら、まぁだいたいガキども除きゃあ……いんや、ガキどももだなあ、みんなだなぁ、あんたのこと、どうにかしてやろうって、話でもちきりだったんだぜ。なにせ男所帯だ。女は珍しい。女ってのを、どうにも、抱いてみたくてよぉ。はは、俺ァついてるなぁ」
蜻蛉切は襟ぐりを掴まれて、血のにおいのする男にそう言われて、呆然とした。せめて、めおとのように、と、儚く考えていた理想が木っ端になって、パラパラと降り注ぐようだった。
同田貫はそのまま蜻蛉切を布団に押し倒すと、自分の着物も乱雑に脱ぎ散らかして、蜻蛉切の単も、引きちぎるようにはだけさした。そうしてひどい握力でもって、蜻蛉切の手のひらにおさまらぬほどの胸をひっつかんだ。
「男同士でもよぉ、ヤれるっちゃヤれんだよ。実際俺も何振りとも寝てる。ケツは使わせねぇけどな。男でも乳首ってのは感じるらしいんだけども、こんだけふくれてんだ、ふくれてるとこもイイんじゃねーの?ああ、触り心地も悪かねェ。やわっこいなあ、ちぎれそうだ」
実際、ちぎられるのではという握力だったので、蜻蛉切は思わずうめき声をあげた。同田貫はそれも耳に心地いいといわんばかりに蜻蛉切の首筋に歯を立てる。血がにじむほどそうされたので、蜻蛉切は「い、いっつ!」と悲鳴をあげた。同田貫はそのついた歯形の歯の数を数えるように舌を這わせて、「女の悲鳴はいいなあ」と耳を噛むように蜻蛉切に囁いた。
「せ、せめてやさしく……心得が、ないもので……」
「んなこた知らねえんだよ。俺ァ女に触れて、股開かして、穴にちんぽぶっこめりゃそれでいいんだからよ。何期待してんのか知らねーけどよお、恨むなら女で顕現した自分を恨めよ」
「そんな……」
「ああ、接吻がないのが嫌か?口と口合わせるだけなのになぁ、何がそんなにいいんだか」
「ちが、」
蜻蛉切はかよわい腕で同田貫の胸を押したけれど、それもむなしい抵抗で、ぽってりとした蜻蛉切の唇に、少し厚めの同田貫の唇が重なる。抵抗を唱えようとした隙間から舌がねじ込まれて、舌を絡めとられ、吸われて、口の中を舐られて、蜻蛉切はじたばたと暴れ、同田貫の背中に爪さえたてた。同田貫はそれをあざ笑うかのように唇をずらしていって、乳房のてっぺんにあるそれを口に含んだ。それを舌で転がされると、頭の芯がとろけるような、身体から力が抜けるような気がしていけない。爪をたてていた腕がぱたんと蒲団に落ちたと同時に、ぎりりと歯をたてられた。蜻蛉切はたまらず悲鳴をあげて同田貫の頭を叩いた。すると同田貫はにやりと笑う。
「なぁ、結構試してんだ。痛いのと気持ちいいの、交互に繰り返してってとさあ、痛いのが気持ちよくなって、気持ちいいだけなのがなんだか物足りなくなんだよ。最後にゃ、血まみれになりながらヤらねぇと気が済まなくなる。そこまで躾けてやっからよお、精々そのちんけな抵抗、続けてみろや」
同田貫は自分より背の高い蜻蛉切の脚を軽々と押し広げて、片足を肩に担いで、その付け根を指でまさぐった。穴を探していたらしかったが、変な拍子にそれが陰核に触れて、蜻蛉切は知らない感覚に身を捩らせた。
「……あん?男にゃねぇな、これ。ちいせぇちんぽみてぇだなあ。なあ、なんだ、これが気持ちいいのか?」
同田貫は親指の腹でそれを何度かこすってみせて、蜻蛉切を困らせた。そこをいじくられるたんびに、なんにも、この刀のことを好いてなんぞいないのに、白んだ快感が背筋を這いまわる。脳みそのあたりに到達しそうになったところで、股の裂ける痛みに目が覚めた。同田貫の指が二本、蜻蛉切の割れ目に差し込まれたのだ。まだ一度も、なんにも受け入れたことがないところに、武骨で、傷だらけの指が容赦なく入り込んでくる。そのくせ、親指では陰核を押しつぶしたり、擦ったりをつづけているのだからたちが悪い。いいのと、痛いのとがぐっちゃぐちゃになって、蜻蛉切が「あ、嫌だ、嫌、」とせがむことしかできなかった。
「はは、あんた、素質あんな。あんだけ痛くしてやったのに、穴はぐずぐずじゃねーか。ほら、見ろよ、糸引いてやがる」
同田貫はそう言って指をずるりと抜いて、蜻蛉切の柔らかい腹に乗せ、そこから粘液をいやらしくのばしてみせた。蜻蛉切はもう泣きたくて、泣きたくて、仕方がなかったのだけれど、泣いてしまったらまたこの刀を悦ばせるだけなのだとわかっていたので、ぎっと唇を噛んだ。同田貫はまた指で股ぐらをいじりながら、それを嘲るように舐めてみせる。
「ぎちぎちだなあ、これじゃあ俺の、入るかぁ?膜があるとか、ないとか、ああ、指でなんかぷっつんいった気がしたけどそれか?もっとぶっすりいかねーと面白くねーなあ」
「……この、下衆が……」
「はは、これからその下衆のガキ孕むのはあんただろうがよ。ああ、もういいや。だいたいわかった。男にゃしこりがあんだけど、女にはねんだな。ちっせぇちんぽがそれだったって話だ」
同田貫は犬歯を剥いて、蜻蛉切の両足を肩に担ぎあげた。そうして蜻蛉切が静止するまもなく、そそり勃ったちんこを、すこしばかり、ほんとうにすこしばかりひろげられた入り口に押し当てる。どくどくと脈打っているようで、それがそのまま同田貫の興奮のさまなのだと思うと吐き気がした。けれど入り口はどんどん押し広げられて、ついには蜻蛉切が「痛い!痛い!」と涙を流した。顕現してはじめての涙だった。同田貫は「あー……男のケツのが締まりはいいなあ」なんてクソみたいなことを言いながら、それでも熱棒をおしすすめて、ついに、はいるところまでいれてしまった。奥のほうにすぼまったところがあって、同田貫のちんこはそこまでぴったりに、いやそれを押し上げるほどはいりこんだ。
「行き止まりがある。なんだこりゃ。男にはねーぞ。へえ、先っぽも相手してくれんだ。いいな、女って」
「い、痛い、痛い!抜いてくれ!後生だ!もう嫌だ!」
「痛いのと、気持ちいいの、な」
同田貫はそう言うと、まるでちんこのように勃起していた蜻蛉切のクリトリスを指で擦った。そうすると自然と子宮がすぼまって、痛みが強くなったけれど、同時にどうしようもない快感が襲ってきて、蜻蛉切は「あっ!あ、あ」とはじめて嬌声をあげた。同田貫はそれに満足して、器用にもクリトリスを擦りながら、腰を動かし始めた。はじめゆるゆるとしたそれが、子宮口を突き上げるころになると、蜻蛉切はもう気持ちがいいのか痛いのかがごっちゃになって、あられもなく悲鳴とも嬌声ともつかない声をあげて泣きに啼いた。
「あっは、なあ、もうあんたのちんぽ触ってねーぞ。なあ、どこでよがってんだ?言えよ、ほら!」
「あ、あ、奥が、奥、は、ああ、奥は、」
「知ってんだ、女は奥の方でガキ孕むんだ。ああ、イイなあ、こういうの、おもしれぇ。……っ、あ、よし、奥に出すからよお、ちゃあんと、孕めよ!」
「っん、あ、あっ」
蜻蛉切のナカで同田貫のちんこがどくんとひとつ跳ねると、そのままびくびくと痙攣をしながら、どろっと熱いものを吐き出した。胎の中に、他人の中身がはいってくる感覚に、蜻蛉切はやけに熱っぽくなり、萎えた同田貫のちんこが抜かれる感覚で、びくびくと身体を痙攣させた。脳みそが揺さぶられるような快感が身体を支配してきて、どうしようもなくって、泣きながら、絶頂というものを知った。
「おいおい、すげえなあ、股の穴がひくひくしてやがる。これに突っ込んだらさっきよりずっとイイんじゃねえか?」
同田貫のそれは疲れを知らないのか、また膨らみはじめていて、蜻蛉切はもう頭がおかしくなって、ただ、これぎりではないのだと、崖の上から突き落とされた気分になった。
それから同田貫の気のすむまで、下になり、上になり、噛み痕だらけになって、涙で目が開かなくなるまでそうされて、気を失うようにして、蒲団に転がされた。

蜻蛉切が目覚めたのは翌日の昼過ぎだった。そうして、身体を起こした時に「ん?」と思った。喉から出た声もそうであったし、目線も少し高くなっている。そうして、はっとして胸に手をやると、そこには脂肪の塊でなく、引き締まった筋肉がさざめいていた。身体のどこを見ても男のそれで、試しに自分の左手首を右手でぎっちりと掴んだら青あざまでできた。何がどのように作用してそうなったのかは謎であったが、蜻蛉切は同田貫の精液を取り込んだことによって、元の(という表現は正しくはないかもしれないが)男としての身体に変貌を遂げていた。そうしてふと視線を横にやれば、満足気な顔で高いびきをかている同田貫がいた。蜻蛉切は少し考えたのち、その乱れた装束の胸倉を掴んで、同田貫を叩き起こした。
はじめ同田貫も事態が呑み込めていないようであったが、蜻蛉切が「さて、痛いのと、気持ちいいのと、交互に、……そして一緒にやると、どうなるんだったか」と耳を齧ったことで、さっと青ざめた。
「ふざけんな!俺はネコはやんねーんだ!」
「自分の処女を切っておいて、自分だけ逃れようなどと、あなたも我が儘が過ぎる」
蜻蛉切は大きな身体にまかせて同田貫を床におさえつけ、もとより乱れていた装束を破るようにしてはぎ取った。傷だらけの身体に、これから自分がまた傷をこさえていくのかと思うとぞくぞくした。同田貫はあらんかぎりの力で抵抗をしたけれども、練度の差もあるはずなのに、蜻蛉切にかなわない。蜻蛉切はまず同田貫の乳首を捻り上げ、「痛いですか?」と優しくきいた。同田貫は「放せ」「やめろ」の一点張りで、しかしその顔は苦痛に歪んでいた。それから、蜻蛉切は自分が昨日つけられたであろう首のあたりに、思い切り歯をたててやる。すると同田貫はさすがに色気のない悲鳴をあげて、息を乱した。そこから傷を舐って、同田貫の唇を甘く噛んでやる。悲鳴のかたちをした唇の隙間から厚い舌を差し込んで、昨日同田貫がしたように、好き放題、口の中で遊んでやった。同田貫の口の中は戦場か、昨日のうちのどこかで切ったのか、ほのかに血の味がした。たまらなく、興奮する。
それから蜻蛉切はやわらかく接吻を落としていって、同田貫の乳首を、舌の上で転がした。ネコの経験が無いとは言っていたが、タチでもそこは弱いらしく、同田貫が少しばかり熱い息を吐いた。だから思い切り噛んでやった。蛙を潰したような悲鳴も耳に心地よくって、蜻蛉切は陶酔とはこういうことを言うのだろうなあとぼんやり考えた。そうして同田貫の股間に手をやって、それが勃ちあがっているのをみて、口元が緩むのを抑えられなかった。
「公平でないですな。あなたはもう、『痛い』のも『気持ちいい』」
「うるせぇ!はなせ!ぶっ殺してやる!」
「抱き殺す、というのも、まぁ、悪くない」
「性格までおかしくなってやがる!昨日は泣いてわめいてたくせによォ!」
「ええ、女でしたからね。けれどどうして、男になってしまうと、どうにも、あなたは嗜虐心を煽る。自分の本当の性分がそうなのか、あなたと混ざってそうなったのか、わかりかねますが」
蜻蛉切は同田貫が昨日自分にそうしたように、脚を開かせ、その片方を肩に担いだ。しかし身長差で、同田貫は腰まで浮いてしまう。同田貫のちんこは、蜻蛉切が何度か扱くとすぐにそそりたって、先走りを流した。蜻蛉切はそれを指ですくいとり、わざわざ見えるように、粘つかせた。そうしてその指を自分の口に含んで、唾液をたっぷりと絡ませて、「昨日は二本からでしたな」と、窄まった同田貫のケツの穴にむりやりそれをねじ込んだ。蜻蛉切の指の方が、同田貫よりずっと太い。同田貫は「いてぇ!やめろ!いっ!痛い!痛い!」と喚き散らしたが、蜻蛉切はそれをなだめるようにちんこを扱いてやった。そうすると本当に穴が収縮して、ああ、これは男も女もかわらないのだな、と妙に納得をした。
蜻蛉切の指が中ほど過ぎまで入ったあたりに、なにやらしこりのようなものがあったので、ぐっと押したら、同田貫が急に「あっ!」と嬌声をあげた。これが男の「小さなちんこ」らしかった。蜻蛉切はああ、今同田貫は痛くて、気持ちいいんだろうなあと思いながら、そこを執拗に責めて、責めて、同田貫が嬌声しかあげなくなったところで、指を引き抜き、自分の、同田貫のそれよりも大きなちんこをあてがった。
「いや、いやだ、やめてくれ……やだ……」
「はて、聞こえません」
同田貫の穴にあてがった自分のちんこも、昨日の同田貫のそれと同じようにどくどくと脈打っていて、今にも破裂しそうだった。興奮をしていた。自分を組み敷いて、暴虐のかぎりをつくした刀が、今は自分の下で喘ぎ、喚き、果ては涙まで流している。どうにも、たまらない。たまらないままにぎちぎちと腰を進めると、なるほど、男の尻は締まりがよかった。途中でプツンと切れて、ぱたりと血が蒲団に染みたが、熱く絡む肉壁に、蜻蛉切は腰を進めるしか選択がなかったし、それ以外があったとしても、それはきっと選ばなかったに決まっている。
「いだい!いだい!嫌だ!死ぬ!」
「ああ、男はいい。気持ちがいい。……ん、おや、行き止まりがある。あなたは男にはないと仰っていたのに」
「ちがう!んなのねぇよ!痛い!やめてくれ!」
「ああ、自分は昨日、何度その言葉を吐いたか覚えておりません。あなたもきっと、忘れるくらい、言うのでしょう。そうして、最後にはよがって、きっと、どうにもならなくなるんです」
ずっぽりと根本までおさまった自分のちんこを、蜻蛉切は昨日同田貫がしたように、はじめは同田貫のちんこもしごきながら緩やかに動かし、そうして、最後には同田貫の尻が赤くなる勢いでピストンした。同田貫は「あっ、いた、ああ、あ、やめ、奥、あたっ、なん、だ、これ、あっあっあっ」と情けなく涎まで垂らしながらよがって、蜻蛉切が果てるより先にぎゅうっと尻穴をすぼめて、精液をどろりと流した。蜻蛉切はその同田貫の腹にかかったあまり白くない液体を、わざわざ指でのばして、「自分はまだですが、随分とお早い」と、笑って見せた。同田貫は結腸を責められての絶頂にまだ口をはくはくさせており、蜻蛉切はそのナカの収縮を、心ゆくまで楽しんだ。そうして、それがおさまりかけたところでまたズンと奥を刺し貫いて、同田貫に悲鳴をあげさせる。
「あっあっ!まだ!イって!あっああああああああ」
「自分はまだですので」
「やめてくれ!後生だ!あああ!あっんんっ!あっはっぎっ!」
「ああ、血で、蒲団が。でもまあ、そうなんでしょう?『血まみれになりながらヤらねぇと気が済まなくなる』のでしょう?あなたの言うとおりだ。ああ、もっと、なんにもでなくなるまで、奥を突いて、差し上げましょう」
蜻蛉切はやさしく笑って、乱暴に同田貫を扱って、傷に傷を重ねて、そうして、「さあ、奥に。孕んでください」と、同田貫の、誰も到達したことがないような、深く深く、奥の奥に、精液を、どろり。

End

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