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この感情は愛とか恋とかそういうものからずっとずっと遠く離れた場所にあるのだ、きっと。


「スティーブンさんは手相とか信じますか?」

レオナルドがそんなことを言いだしたのはライブラのオフィスにスティーブンしかいなかった時のことだった。クラウスは遅めの昼食を摂りに外で出ており、ギルベルトはそれについていった。ザップは居所がわからず、チェインは別の任務中だった。スティーブンは書類を眺めながら、「手相?」と首を傾げた。スティーブンがそれを知らないはずはないので、きっとレオナルドが急にそんなことを言いだしたことに対しての疑問なのだろう。

「昨日テレビでやってたんですよ。スティーブンさん、なんか短命そうだから生命線とか短いんだろうなって」
「短命そうって酷いな」
「だって、今日も寝てないんでしょう?」
「まぁそうだけれど」

そう言いながらスティーブンはいい息抜きになると思ったのか、書類をちょっと置いて自分の掌をなんとはなしに眺めた。レオナルドもそこへ寄って行って、スティーブンの掌を見つめる。

「うわ、生命線短っ」

スティーブンの親指の付け根あたりから伸びている生命線は掌の中ほどで途切れてしまっていた。スティーブンは苦笑いしながら「これはもう死んでいてもおかしくないな」と笑った。

「でも僕も生命線すごく短いんですよねー早死にするんですかね」

ほら、とレオナルドは自分の掌をスティーブンに見せた。そこにはスティーブンよりももしかしたら短いかもしれない生命線が刻まれていた。

「ここにいたら早死に確定だろうからなぁ」

スティーブンはふざけてそんなことを言った。レオナルドはまぁ、と納得して自分の掌を眺めた。そうしてからふと思いついたような顔になってへらりと笑った。

「もしかしたら僕たち死ぬときは一緒なのかもしれませんね」

レオナルドがそんなことを言ったので、スティーブンはふと考える顔になった。そうして自分の掌とレオナルドの掌を交互に見て、その長さをちょっと比べてみた。そうすると二人の年齢的に丁度ぴったりな気がしてきていけない。死ぬときは一緒。それはいったいどういう最期なのだろう。スティーブンは少し想いを馳せる。そうしてからやはりへらりと笑って、「悪くないな」と言った。

この感情は愛とか恋とかそういうものからずっとずっと遠く離れた場所にあるのだ、きっと。


END


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