かえれなくなっちゃったね






冬が終わる。ずっとずっと続いていた冬だ。その中にはきっと春のように暖かな日もあったのだろうけれど、黒子にとってはずっと冬だった。しかし、冬が終わるのは唐突だった。過ぎ去ってみればあっというまだったかもしれない。けれどちゃんとした質量をもった冬だった。6人で集まってみて、黒子はそれを実感した。冬は終わったのだなぁと。

みんなそれぞれに輝いている。黄瀬も緑間も青峰も紫原も赤司も。みんなが素晴らしいプレイヤーだ。黒子はまぶしいと思った。誰しもが眩しい。影さえも目が眩むように。黒子は影だ。ただの影だ。だから彼らとずっと寄り添っていくことは、きっとできる。けれどそうしないと選択したのも黒子だった。ずっとずっと昔に。昔のように感じられるときに。

「手を繋ぎましょう」

黒子がそう言ったとき、たいていが反対した。男同士で手なんか繋いで何が楽しいのだと。けれど黒子があんまりにも真摯だったので、最終的には全員が折れた。折れて、ストバスのコートで丸くなって手を繋いだ。とてもシュールだと、黒子は自分で提案しておいて少し笑ってしまった。黒子と黄瀬が手を繋いで、黄瀬と緑間が手を繋いで、緑間と青峰が手を繋いで、青峰と紫原が手を繋いで、紫原と赤司が手を繋いで、赤司と黒子が手を繋いだ。みんなで円の中心で視線が交わるように、手を繋いだ。そうしたら何か儀式をしているような気分になった。黒子にとっては儀式だったのかもしれない。このまんまの状態じゃ、どこへも行けないし、何もひろえやしない。遠くに行くこともできないし、近くに行くこともできない。今の状態がこれなのだと黒子は思った。この六人ではこうしているのは少し不自然だ。みんながみんな、いろんなものを抱えてしまっていた。いろんなものを持ちすぎていた。ずっと昔はもしかしたらこうしていられたらどんなによかったろうと思ったかもしれない。けれど今は今なのだと黒子は思った。それは他のメンツも同じ考えのようだった。不思議なものだ。手を繋いでいると、会話しているときよりもずっと多くの情報が手のひらから伝わってくる。早く手を放したがっているとか、もう少しこうしていたいだとか、もう先へ進みたいだとか、少し戻ってみたいだとか。けれどその感情を全部天秤に乗せたとして、黒子は先へ進みたいと思っていた。ずっと先へ。ここから先へ。まだ見ぬ明日へ。ずっとこうしているのは簡単だ。とても簡単だ。何もしなければいい。何もしなければずっとこうしたまんまでいられるのだから。けれど黒子は一つ息を吐いて、「きっともとには戻れないのでしょう」と言った。そうしたら、自然とみんなの手が離れて、身体の横に戻っていった。六人はただ円を描いて突っ立っているだけになった。

「みんなで同じ方向へ進もうというのは、僕たちにはきっと、無理だったんですね」

だって、僕たちは向き合わないといけなかったんですから、と、黒子は言って、繋いでいた手をぎゅっと握った。一人分の熱量だけ帯びた手のひらだ。いろんなものを手に入れた。これならひとりでだって、歩いてゆける。ひとりで、みんなと、向き合いながら。ただひとりで。


END

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