隣に置いておくと安心です






期末試験で赤点が返ってきた。赤点なんてものは日常茶飯事だったのだけれど、今回ばかりは意味が違った。赤点をとると遠征に行けなくなるのだ。影山も日向も慣れない勉強なんてものを頑張ったのに、運悪く、赤点になってしまった。けれど、それぞれ赤点ひとつで補習は午前中で終わり、その後田中が救世主を呼んでくれるという話に落ち着き、なんとか遠征には参加できる算段となった。しかし、やはりみんなでワイワイ、東京へ行きたかった。そればかりが悔やまれる。その日の帰り道、日向と影山は途中まで一緒に帰った。薄暗い夜道を、日向は自転車を押し、影山はサインの確認をしながら。

「俺さぁ、なんか不思議な気分」
「何がだよ」
「いや、今まではバレーできればなんでもいいやーっていうか、バレーだけできてればそれでいいやーってかんじだったのに、今回はベンキョーできねーとバレーできねーんだって」
「…補習があるからな」
「それって、なんかヘンだなって」
「どこがだボゲ」
「だって、それって、俺らが誰かに許されてバレーやってるみたいだ」

日向の言葉に、影山はぐっと言葉を飲み込まなければいけなかった。日向はたまに、こういう深いところをついたことを言う。いつも能天気でバレーのことしか頭にないくせに、こういう時ばかりは真面目で、こわい顔になるのだ。

「やりたいからやってるだけなのに、ベンキョーができないとバレーできないんだって」
「学生の本分は勉強だって先生言ってただろ」
「でも、なんかベンキョーできないならバレーするなって、学校に脅されてる気分になった」
「勉強すりゃいいんじゃねーか」
「うん、まぁ、そうなんだけどさー」

影山は日向がいまひとつ腑に落ちていないということに気が付いていたけれど、このままこの議論を重ねていったって、それは地平線の彼方まで続いていってしまう気がしていけなかった。それよりもバレーがしたいと思った。バレーがしたい。けれど、そのバレーを思いっきりするためには、勉強ができないといけない。たしかに、不思議かもしれないと影山は思った。自分たちはまだ、親だとか、学校だとか、そういうものに許された範囲内でバレーをしているのだと思えた。社会に出てからも、きっと、会社だとか、実業団だとか、そういうものに許された中でバレーをしていく。もっと自由だと思っていた。もっと、やりたい時にやりたいだけできるものだと思っていた。

「でもまーバレーできるし、いっか。できればそれでよし!遠征がんばるぞー!!」

影山がぐずぐずと考えている横で、日向は勝手にいつもの調子に戻ってしまった。影山は真面目に考えてしまった自分が馬鹿らしくなって、「もう夜だボゲ!うるせぇんだよ!」と日向を小突いた。悔しい気持ちで、いっぱいになりながら。


END

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