残念無念また来週






※刀剣破壊表現あります
※前世設定あるけど前世が未来っていうわけのわからない現パロです


























「この戦、勝ったら俺と付き合ってくれ」

そう言って出陣したその日、御手杵は帰ってはこなかった。





御手杵と同田貫の付き合いは小学生からだった。小学生からずっと二人でつるんでいる。小学生というものは色々と倒錯をする時期で、御手杵はずっと二人でいる同田貫に恋をしてしまった。ずっと一緒にいたいと思ってしまった。そうしてずっと一緒にいるためにはどうしたらいいのかとそのとき学校の校長だった三日月宗近に尋ねてみた。三日月は「それならば結婚すればいいのだろうな」と簡単に答えた。御手杵は同田貫と結婚したいと思った。けれど結婚とはなんだ、と調べてみると意外とややこしい。結婚するためにはその前に恋人というものにならなければいけないらしかった。そして恋人になるためには告白して付き合うことを相手と約束しなければいけないのだ。そして御手杵はこの知識を少女漫画で仕入れてきてしまった。だから御手杵は同田貫にこう言ったのだ。

「この朝顔が咲いたら俺と付き合ってくれ」

丁度その頃は夏休み前で、朝顔を育てるという自由でもないみんな一緒の自由研究をしていた。御手杵は自分の朝顔の鉢を指さして、そう言ったのだ。同田貫はなんてことはないように「ああ、いいぜ」と応えた。

しかしその朝顔は枯れてしまった。


その夏を過ぎて、秋も冬も通り過ぎて、御手杵と同田貫は中学生になった。中学生になっても二人は一緒だった。一緒のクラスになって、御手杵はバスケ部に、同田貫は剣道部に入部した。もう小学生のような倒錯はなかったけれど、御手杵は気が付くと同田貫に恋をしていた。小学生の時に落ちてしまったので、もうあとには戻れなかったのだ。御手杵は身長がめきめきと伸びて、バスケ部ではすぐにレギュラーになった。レギュラーになった初の試合前、同田貫にまた言ったのだ。

「この試合に勝ったら俺と付き合ってくれ」

もう頭も随分と出来上がってきていて、男同士じゃ結婚できないとわかっていた。けれど、御手杵は同田貫が好きだったし少女漫画も好きだった。だから照れ隠しも含めてそう言ったのだ。同田貫はやはりなんてことはないように「ああ、いいぜ」と応えた。

しかしその試合は負けてしまった。


二人はそのままなにもなかったようにやはり一緒にいて、一緒に過ごすうちに高校生になった。高校生にもなると現実が見えてくる。同性愛への偏見だとか、変な興味だとか、そういうものが御手杵にはちゃんと見えていた。自分がちょっとおかしいくらい同田貫に執着しているということもわきまえていた。けれど小学生の頃からずっと、同田貫への想いに変化はなかった。ずっと一緒にいたいのだ。どうにかして同田貫を自分のところにしばりつけておきたいのだ。そうして高校に入ってからはじめての期末テストを迎えた。初のテストの前の日に、御手杵はやはり同田貫に言ったのだ。

「今度のテストで赤点がなかったら俺と付き合ってくれ」

御手杵は中学まではテストで赤点なんてとったことがなかった。頭の出来は同田貫ほどよくはなかったが、中の下くらいで、そこまで悪い方じゃなかった。自分でもこれはハードルを下げすぎたかな、と思った。しかし同田貫はやはりなんてことはないように、「ああ、いいぜ」と応えた。いつかのように。

しかしそのテストで御手杵は人生初の赤点をとった。


二人はもう高校三年生になる。小学校からここまで、奇跡的に二人はずっと同じクラスだった。つるむ面子も御手杵は増えた。それでも御手杵は同田貫が好きだった。同田貫は不愛想で、勉強と部活のことしか頭になくて、まともにつるんでいるのは御手杵くらいだった。御手杵は外の世界に出ようと必死だった。他の人とつるんでみれば、女の子と話をしてみれば、同田貫への想いも風化するのではないかと考えたのだ。しかしそんなことはやはりなくて、御手杵は同田貫にずっと恋したままだった。同田貫と一緒にいるときが一番安心するし、一番自分が自分でいられると思っていた。だから御手杵はやはり同田貫しかいないのだなあと思っていた。それでやはり御手杵は同田貫に言ったのだ。

「このじゃんけんに俺が勝ったら俺と付き合ってくれ」

これ以上ないというくらいハードルを下げたつもりだった。少し冗談のようなノリでもあった。放課後の教室で、他には誰もいなくて、シチュエーションとしてはばっちりなのに、そのセリフはどこか間抜けだった。それなのに同田貫はやっぱりいつかのように「ああ、いいぜ」と言った。

しかしそのじゃんけんは御手杵の負けだった。

「なんでダメなんだろう。なんでだーなんで俺は同田貫と付き合えないんだー」

じゃんけんに負けた御手杵が小学校の頃からの自分の勝負弱さを嘆きながらそう言って天井を仰ぐと同田貫はことも無げに「お前は昔っからダメだよなあ」と言った。

「なあ、普通に付き合ってくれって、言えねーのかよ」
「うええ、それじゃ恰好よくない」
「少女漫画の読みすぎだ。この花が咲いたらで花が枯れる、この試合に勝ったらで試合に負ける、このテストで赤点なかったらで赤点とる、じゃんけんに勝ったらでやっぱり負ける方が断然恰好悪かねーか」
「そりゃあ、そうだけどよお」
「お前は昔っからそうなんだ。前からそうなんだ。そのセリフを言ったらもうダメだって決まってるんだ。前世からそういう呪いにかかってる。ずっとずっとずっと待たされてる俺の身にもなってみろ」
「前世から…」
「前世から」

御手杵は前世と言われてもぴんとこなかった。ぴんとこなかったけれど同田貫が冗談を言うようにも思えなかったので、きっとそれは本当なのだろうなあと思った。そして前世から待たされている同田貫のことを思った。それはとても申し訳ないことをしているつもりになった。だから御手杵は同田貫に言ったのだ。

「明日、明日会えたら付き合おう」


END




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