え、マジで行くの?






「合宿?」

気の抜けた声で疑問を口にしたのは銀時である。桂に渡されたプリントの一行目には汚い字で「剣道部の夏休み強化合宿について」と書いてあった。今時手書きかよ、と文句を垂れるのは後回し。銀時はすぐさま嫌そうな表情をした。

「俺、パス」
「却下だ。」
「いや、行かねーし」
「強制参加だ」
「嫌だっつてんだろ!大体!去年までこんなん無かったじゃねぇか!なんでいきなり合宿なんて面倒くせぇもんやんだよ。青春ですかコノヤロー」
「夏休み明けて直ぐに大会があるだろう。あれに向けての合宿だ」

それから、と桂はペラリと写真を出して銀時に見せる。その写真は隣の真選高校の剣道部のものだ。主将の近藤が馬鹿丸出しの笑顔で賞状を持っている。多分こないだの大会の写真だろう。因みにこの大会、この学校の剣道部は一回戦敗退である。銀時がサボり、高杉は勝ったあとうっかりガッツポーズで負け。坂本が行方不明になり、桂がそれを探している間に相手が不戦勝。実力の半分も出せていない。

さらに、この真選高校とこの学校は古くからライバル関係にあり、なにかと対立している。たとえば、紅茶派かコーヒー派か、横断歩道は黒と白どちらを踏んで渡るかなど、本当にくださらないとしか言いようのない理由でさえ、竹刀を取って喧嘩するのだから救えない。銀時としても相手の副主将である土方とは前々から因縁の関係にある。桂曰わくことあるごとに喧嘩ばかりしているこの高校が最近なにやら大会で連勝しているとか常勝高校にのし上がったとかでうちの高校も負けていられないという話だそうだ。

「認めたくはないがお前はうちの部の主力だからな。合宿に参加して貰えねば困る」
「つったってよー」
「お菓子は特別に1000円まで許可してやる。さらにバナナはお菓子に入らない!」
「そんなどうだ!って風に言われても困るんだけど」
「しかも坂本の奢りだ」
「…しゃーねーな」

銀時は渋々ながら承諾。別に1000円分のお菓子に釣られたわけではない、らしい。本人曰わく。

その時突然教室のドアが開いて坂本と高杉が乱入。その格好がまたおかしい。高杉は海パンにアロハシャツ、浮き輪にシュノーケル。坂本に至ってはそれプラス麦わら帽子にスイカである。

「っしゃー!!合宿!!海水浴しようぜ海水浴!!」
「スイカ割りにナンパもせにゃあのぅ!」
「ああ、言い忘れていたが合宿所が海辺らしくな。海水浴も予定に入っている」
「遊ぶ気満々じゃねぇか。なんだあの馬鹿二人は。目も当てられねぇよ馬鹿」

高杉なんかはしゃぎすぎて机上から飛び込み練習をしようとしている。泳げもしないくせに。危ないからやめろと言う前に床に頭を打って悶絶。馬鹿である。坂本はスイカ割りじゃーと言いながらスイカに手刀をくらわしてこちらも悶絶。馬鹿が増えた。

「お前ら遊びに行くのではないんだぞ!!坂本!竹刀を使おう!」
「オメーも浮かれてんじゃねぇか!」

銀時が桂の頭に手刀を食らわせた丁度その時である。騒ぎを聞きつけた生徒指導の松平先生が「なーにやっちゃってんのお前らぁ!!」と銃刀法無視して突然発砲。ライフルなんてどこから出した。銃弾は見事スイカに命中し真っ赤な果肉が無残に飛び散る。その後恐怖に固まった四人は仲良くババチョップを食らい生徒指導室へ。因みにこの四人、生徒指導室の常連である。つまり全員馬鹿だった。先が思いやられる。


END



三年生は夏休み前に部活終わるとか細かいこと気にしたら終わりですすみません。
サザ●さん方式でお願いします。
この連載の先が思いやられるわ。





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