運命の赤い糸/銀桂




※現パロで同棲


桂は偶に変なものを拾ってくる癖があった。それは近所のゴミ捨て場からだったり道端からであったり河川敷の林の中からだったり様々である。そして、拾ってくるものもまた多種多様であった。ある時は壊れた自転車で、またある時はまだ使えそうな、けれど薄汚れた真っ赤なソファだったりした。酷いときはフライパンで、一番驚いたのは子猫だった。みぃみぃと可愛い声で泣く子猫。弱っていて2日後に死んでしまった。あの時は近所の土があるところに埋めたのだったが、銀時はもう場所が定かでない。その子猫が使っていたダンボールは、桂の収集コレクションの中にまだ居座っていた。それらのガラクタはリビングの一角を占拠していて、まるで奇怪なオブジェのようだ。スペースを取らないために天井に突き刺さらんとしていて、けれど複雑に組み合っているせいか崩れる気配はなかった。しかし同居人の銀時にとって、これほど迷惑な話は無い。何度か撤去を要請したが一向に実行する気配は無く、結局今に至る。そんなに広い部屋でもないのだから勘弁して欲しい。

「なぁ、なんでこんなガラクタ集めてんの」
「運命を感じたからだ」
「電波め」

桂が言うことには、オブジェに突き刺さった様々は彼の崇高なインスピレーションによって選ばれた運命共同体らしい。銀時には到底理解できなかった。そして、桂はその運命共同体でもって、人の運命というものを考えているのだそうだ。そうすると、あのオブジェは桂の運命とやらを表しているのだろうか。だとしたらやたら奇怪な運命を辿るに違いない。

「なぁ、何時完成すんだよ、この運命」

ある日銀時がアイスクリームを食べながら、真っ赤なソファに座って、言った。桂はというとふむ、とすこし考える。じっとオブジェを睨んでから、銀時を見た。真っ黒い瞳の中に銀時と彼が座る真っ赤なソファが映る。

「お前があの天辺に乗っかったあたりだろうか」

銀時は手前の小指から糸がずっと延びてあのオブジェと繋がっているように思えた。真っ赤な糸だ。運命共同体。桂の奇怪な運命の一部分。手前は随分と、ガラクタに近いらしい。銀時は溜め息をついてアイスクリームをペロリと舐めた。彼のインスピレーションが確かでないことを祈るばかりだ。


END




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