プール上







夏の体育といえば専らプールである。男子は女子の水着姿にムラムラし、女子は「男子キモーイ」と蔑むような視線を送るのが定石だ。しかしながらこの学校の体育は男女別々で、プールは交代交代で使用する決まりになっている。

「高杉はさぁ、一回全裸になってからスクミズはくのやめろよ。そしてブーメラン型って、おま、際どいだろ」

プールサイドでやたら格好をつけている高杉に若干ひきながら、銀時は言う。高杉は本当に際どいブーメラン型の競泳水着着用である。理由は「こっちのが格好いいから」だ。高杉はむっとした表情で同じくプールサイドにいる桂を指差す。

「あいつよりマシだ!」

指さされた桂はというと、オリンピックでよく見かける足首付近までの水着を着用している。なんとも格好がついていない。これにはかの坂本も辟易していた。大方桂の生足をねっとり観察する気でいたのだろう。

「馬鹿ばっかりだ」
「お前もな!」

坂田は真面目に普通のスクミズ愛用者で、坂本もまたしかり。高杉の水着から色々とはみ出さないか、坂田は心配顔である。公然猥褻罪という言葉が脳裏をよぎった。


さっさと面倒な体操を終えた生徒は暑さに負けて飛び込むようにプール内へ。四人もまた然り。しかしながら高杉だけがプールサイドでまだ格好をつけている。銀時はそれを見つけて首をかしげた。

「泳がないのかよ」
「いや、今日はあの日だから」
「どの日だ!え、何、もしかして泳げないわけ」
「んなわけねーだろ」
「じゃあ泳げよ。競争しようぜ」
「いいだろう。だが断る!」
「よくねーじゃねぇか!なにその複雑な返答!!いや簡単すぎるけど!一個のかぎかっこの中でどんだけ揺れ動いてんだオメーの感情は!!」
「うっせ!!俺を泳がせたいなら百万円かビート板持ってきな!話はそれからだ!」
「結局泳げないんじゃねーか!」

いいからプール入れ!高杉は金槌らしく、坂田にプールに引きずり込まれるとやたらプルプル震えた。小学校の同級生によくいるタイプの金槌である。小学校の可愛い女子が震えているのは微笑ましいが、高杉が震えているのは大変気持ち悪い。坂田はうわぁと若干引きつつ、お情けでサイドからビート板をとってきてやる。

「お前、なんでそんな泳げないわけ」
「ゴムゴムの実を食ったゴム人間だから」
「いや他ジャンルの話持ち出されても困るんだけど!つーかんなわけねーだろ!」
「嘘じゃねーし!海賊王に俺はなる!!」
「黙れ馬鹿!じゃあ腕伸びんのか!?ひっぱるぞ!はい、いちにっさんんんん!!」
「あだだだだだ!!」

あらんかぎりの力で腕を引っ張られ、若干涙目な高杉。パニクった脳で冷静に坂田の股間を蹴り飛ばし一旦プールサイドに緊急避難。

「おまっ!死ぬだろ!?」

哀れ坂田は言葉が出ない。言葉にならない悲鳴が彼の唇の隙間からにょろにょろと這い出ててくるばかりだ。坂田のあまりの様子に、やりすぎたかと高杉はプールに寄る。すると坂田の瞳が憎悪に煌めき、次の瞬間には水柱が上がっていた。高杉が落ちたのだ。プールに。坂田に腕を引っ張られ、頭から。泳げないどころか潜れない高杉は「がばごぼ」と聞き取れない悲鳴を上げるが坂田はかまうもんかと沈め続ける。

「ふははは馬鹿め!死ね!露出狂死ね!!」

高らかに笑いながらの高杉イジメ。死なないように息継ぎはさせるがあとは頭をひっつかみ沈めて引き上げての繰り返し。

「せんせー。坂田君が高杉君いじめてますー」

桂が先生にチクるまで高杉イジメは続いたとかなんとか。そしてすぐ先生に救出された高杉は暫くむせ、いじめっ子銀時への第一声は、「脱ぐぞ!?」だったそうな。何故に脱ぐんだこの男は。


END



ブチ切り(ry)
金槌高杉が書きたかっただけです。
テンションは高くなりませんでした精進します。





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