親愛なるフォロワーと盛り上がったジョニ→ゼル→←ラト→ジョニでの現代パロ散文。
ジョニー25歳、公務員。ラット21歳、焼き鳥屋の屋台で働いています。
ゼルは19歳。大学生。今回は女の子設定のゼル。
※ラットとゼルは同居しています。

ゼル視点。



逃げ水のような




やばいな、と思った次の瞬間には、もう手遅れだった。

ジョニーは俺の同居人のラットの店の常連で、初めて彼が屋台に来た日、酔いつぶれたこいつをラットがわざわざうちまで連れ帰ってきたのが始まりで、たまにうちに遊びに来るようになった。

それで、どうやらこいつは俺に惚れてしまったらしくって、クソ真面目そうなそいつが言う。「付き合ってください。」

でも状況はなんとも最悪で、俺が寝起きで寝ぼけて、ラットと間違えてしまって、甘えるみたいに引っ付いて、なんつーかまあ男のシンボル的なところをまさぐっちゃったら、押し倒されてしまった。

俺はジョニーに押し倒されて、ハッと目が冴えて、こいつがラットじゃないことに気が付いた。だってラットは押し倒してきたりなんかしないから。

ヤバい犯される、と思ったけど、奥手なのか真面目なのかなんなのか、こいつは押し倒した瞬間に我に返ったみたいで、一瞬がばっと起き上がって俺から若干距離を取った。

そしてジョニーは俺の前にひざまづいて、俺の右手を両手で握って、「ごめん。ごめん・・・・えっとその・・・俺、前から、君が好きでした。君がよければ、俺と付き合ってください・・・。」と懇願してきた。

うん、わかってる、俺が悪い。
だってどう考えても、そんなことされたら勘違いする。好きな女からそんなことされたら、OKだと思っちゃうよな。駄目だよな。俺が悪い。分かってる。でも、どうやって言い訳しよう。俺はジョニーに手を握られたまま、頭を下げてるこいつの綺麗なつむじを見ながらダラダラと冷や汗をかいた。

俺はラットと付き合ってるわけではなかった。ただ何となく肌が合うからという理由で身体をあわせて、ラットが男好きだからということもあって、そういう事をしても本気になられることはないだろう、などとよくわからない安心感があったせいで、俺は彼とよく繋がっていたのだった。

だけどセフレというのも少し違うような気がした。
俺たちの関係はそこまで割り切ってドライというわけでもなくて、ラットと俺がやるのは、単なるコミュニケーションの一環で、快感を追うというある種の遊びを二人で楽しんでいる感覚だと、個人的には思っている。

でも、そんな関係、誰に告白できよう。

ジョニーには、俺とラットには何もないと伝えていた。
俺からも、ラットからも。
くわえて二人とも恋人は今いないんだ、とも、伝えていて。

ラットは、ジョニーのことが好きだった。
屋台の常連が、ジョニーを連れてきたその日から、ラットはもうジョニーに全部持って行かれてしまっていた。ラット曰く「めちゃくちゃヤバいくらいにタイプ」だって、ことあるごとに俺に言ってきていた。

そう言われて俺は少しだけ寂しかったけど、別にラットは俺のものではなかったので、もしジョニーがラットと付き合うことになったら、ちゃんとお祝いしてあげようだとか、応援してあげようだとか、そんな我ながらやさしい気持ちになっていたりもしたのだ。

だけど、困ったことに、そのラットのめちゃくちゃヤバいくらいにタイプなジョニーさんは、うっかりもうっかりと、俺なんかに惚れてしまったのだった。

告白されたのは今この瞬間が初めてだったけど、ラットが泣きながら言うには、「ジョニーって、お前のこと、めちゃくちゃヤバいくらいタイプなんだって・・・」という事だったし、態度を見ていれば恋愛にあまり興味のない俺にだってすぐ察せてしまうくらいに、ジョニーの態度はわかりやすかった。

(ああ、でも、どうしよう・・・・)

突き刺さるような真摯な姿を見せるジョニーに、
「ごめん、ラットと間違えた。」だなんて。

(言えるはずないしな・・・)

よしんば言えたとしても、その関係性をどう説明したらいいんだろう。真面目すぎるこいつを見てると、なんだかラットとのただれた関係を告白してしまったら、殺されちゃうんじゃないかなあとぼんやりと思った。

(ああ、どうしよう。どうやって、ごまかそう・・・・・・・)

だんまりを決め込んだまま時計の秒針がコツコツと進んでいく。
俺は、この状況下に、ただひたすらに誤魔化すことを考え、困ることしか出来ないで居た。



END.


,back