未完。ジョニゼル。



花を吐く




「どこにも行かないで」と言われてなんだか胸がずきずきした。
そして思う。お前って今までどんな世界を見てきたの。お前の世界って、どんなだったの。
『君に出会って、世界に色が付いたみたいだったんだよ』なんて、いつもロマンチックで安っぽい言葉を並べ立てるお前の世界は、やっぱり本当に、俺に会うまでずっと灰色がかっていたの。

俺の手をそっと握って微笑んだジョニーに俺はなんだか泣きそうになった。
絶対俺がお前のこと幸せにするから、と思ってしまって、ああ、俺はジョニーのこと本当に好きになっちゃったなと思った。
恋をするってこうなんだ。こんなに、苦しくて切ないんだ。恥ずかしがって少し馬鹿にしていた恋愛ってものに身を包んでみて初めて、俺は自分が何も知らなかったことを悟る。

苦しい、すごく、苦しかった。この人が欲しいと思った。全部、俺のものになってって、心底思った。だけど、俺は、そのためにジョニーに何をしてあげたらいいのかとか、まるっきりわからない子供でしかなくって、辛くて、ただ顔をゆがめることしか出来ない。

「ねえ、俺のものになって」

というと、ジョニーは、「ずっと君のものになりたい」と言った。
でも、その言葉が俺の感覚と正しい位置にあるのかどうかわからなかった。
いつもそうだった。

ジョニーは、ジョニーって、なんだか本当にいつもガラスみたいだと思った。
いつかうっかり、落として、傷つけて、粉々に割ってしまうかもしれないと思って、俺は怖がっているんだ、きっと。

愛してるなんて言わないでほしい。すごく怖い。
世界で一番好きだとか、死にたいとか、殺して、とか、そういう言葉は、いつも本当に怖かった。ジョニーは俺にはない感覚をあまりにもたくさん持っていて、俺は正直ついていけなかったし、そういう感覚を持ちすぎているジョニーを受け入れきれなかった。

だって、俺以外の人には、いつも、普通に笑って、普通に過ごして、なのに、どうして、ジョニーは俺にだけそういう事を投げかけて、求めるのだろうと、すごく怖かったし、フェアじゃない気がしていた。俺だって、普通に、生きて、笑って、冗談とか言いあって、普通にしているジョニーと、みんなと、一緒に居たかった。






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