※ケリ姫スイーツ、スベイダー×999
スベさんはおっさん。
999ちゃんは18歳くらいの女の子。




言葉はいらない





私の言葉はいつも空中に投げ出されるばかり。

「ねぇスベ、笑ってよ」

「ねぇってば」

私の恋人はとても無口だ。
先ほどまで身体を重ね合わせていたはずの私たちなのに、彼ときたら甘い時間なんか全然作ってくれなくて、ただ私の隣で煙草をふかして窓の外ばかり見ている。

せめて何か言えばいいに。
良かったよ、とか、可愛かったぜ、とか、例えばそんな陳腐な一言だってなんだって構わない。

年頃の私はそんなくだらない一言にもきっと一喜一憂して、この白い頬を赤く染め上げられるはずなのに。

「何か喋って。」

「…こっちを向いて。」

「ねえ」

「バーカ」

「阿呆!」

「ねぇ、愛してるってば。」

何を言っても上の空。
私はもう腹が立って、くるまっているシーツをバサバサとはためかせ、煙草の煙に対抗するみたいに無意味に埃を立てる。

まったく、こんなに若くてスタイルのいい半裸の美少女を前にしてよくそんな態度ができるものだ。
私は憤慨して彼の煙草をその無骨な指先から奪い、そして隙の出来た唇もついでに奪ってやった。

少しだけ長い、触れるだけのキス。
唇を離してみたら、どんな顔をしているのかな。
そっと目を開けると、無表情なその目が、一応私を見ている。

「おい」

「ん?」

「言葉なんかいらないだろう」

そう言うと彼は、私を捕まえて、とても深いキスをした。煙草の味が苦くて、私は少しだけ涙が出た。

あぁ、そうだね。
言葉なんかいらないや。あなたのこの温もりと香りだけ。

ずっと昔から好きな、私だけの。


『私だけのスベイダー。』



END



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