ふたり



1.フレディとジョンソンって誰ですか。【コワルスキー視点】

あなたはいつも楽しそうに話す。
懐かしそうに愛おしげに話す。私の知らない二人。私の知りえない貴方の過去。
私はいつもそれが悔しく、愛想笑いを浮かべながらもいつだって泣きそうだ。

私の知らない人の話なんてしないで。私の知らない貴方の話なんてしないで。

私はその話を聞くとき、はらわたが煮えくり返りそうになります。
その話をするとき、あなたは、私の知らないあなたになる。私のものではない隊長になる。それがいつだって私の独占欲を逆なでる。

何故、どうして、あなたの一生は私だけのものではないのかと。

願わくば、私の信ずる科学の力で貴方を液状にして瓶に詰めてしまいたい。
いや、私なら不可能ではないだろう。いつか何かの拍子に実行してしまいそうだ。

フレディとジョンソンって誰ですか。
あなたに懐かしい顔をさせる二人。あなたに悲しそうな顔をさせる二人。あなたに、うれしそうな顔をさせる二人。

私はいつも、愛想笑いでそれを聴いているのです。隊長。




2.ゆるい拘束具【コワルスキー視点】

許されるならば、ずっとこうしていたい。

夜だ。夜になれば私たちは厳しい任務から解放され、自由になる。
だがその自由時間は主に睡眠にあてられる。私が開発した基地の消灯サイクルが、就寝の合図を告げる。そして私たちはコンクリートのベッドにもぐりこむのだ。
おやすみと言い合った後、半時間も眠ったフリを続ければ、聞こえてくる弟分の寝言やいびき。それを確認すると私はそっと起きだして、あなたのベッドへ忍び寄る。

「まだ起きてたのか、甘えん坊め」

隊長はそう言うと、静かに私を抱き寄せる。あぁ、この夜の一瞬が永遠に続けばいいのに。ねえ、抱き寄せるあなたの腕を、どうか私専用の拘束具にして。
秘められるようにコツリと音を立てる互いのクチバシに、私は永遠の夢を見た。




3.かつてはペンギンだった【隊長視点】

彼がイルカになる夢を見た。

「見てください隊長、すばらしいでしょう。私は哺乳類だ!彼女と同じイルカなんだ!」

そう言って狂喜乱舞した彼を見て私はどこか絶望した気持ちになった。
正直に言うと、少し喜ばしくもあった。彼の喜ぶ顔を見るのは嫌いではなかった。うれしそうな彼を見て私も一緒に笑っていたかもしれない。

しかし私は、死ぬまでずっと彼が私のそばで、ペンギンで居てくれるものと信じ込んでいたものだから、その姿を見た瞬間に底知れぬ喪失感を味わったのだ。

だが、それは夢だ。いくら彼が世界を滅ぼすような発明をしたとして、いくら彼が姿かたちを変えてしまう発明をしたとして、私のそれはただの夢でしかなかった。

だが忌まわしいことに、私はその夢のせいで気付きたくなかったことに気が付いてしまった。だからその日の寝起きは普段以上にイライラとして、おはようございますと近づいてきた彼を意味もなくビンタした。

「なんなんです、いったい。」

困ったような怒ったような悲しい顔をして私を責めるペンギンのコワルスキーに、私は笑った。


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