※うちのフレイキーは、中身は女の子よりですが、
身体は男でも女でもないインターセックス(半陰陽)という設定です。
ご注意ください。



幸せな日常に、渦巻く




呼び鈴で目が覚めた僕は、怠慢な動作で自分のトレーラーハウスのドアを開けた。

「おはよう、ランピー」

今日もフレイキーは僕のうちにやってくる。いつものおどおどした表情を少しほころばせて、まだ太陽が出てきて間もない時間帯にサンドイッチを作って持ってきてくれるんだ。

「おはよぉ、フレイキー。」

目が覚めたばかりの僕は眠たそうな声を出しながら、バスケットを抱えたフレイキーを散らかったトレーラーハウスに招き入れる。そしたら僕は、顔を洗いに洗面所へ。

「もう、ランピーは、僕が来たってまだ寝ぼけてるんだから」

タオルだとかスプーンだとかいろんなものが散らかってる床を片付けながら、キッチンにサンドイッチのバスケットを置いたフレイキーは僕に言う。僕は歯を磨きながらそんなことないよぉってやっぱり寝ぼけた声で返事する。

歯を磨き終わって、ひげを剃って、服を着替えてやっと洗面所から出ると、フレイキーは二人分のコーヒーを沸かしてくれていた。フレイキーはミルクと砂糖、僕は砂糖だけ。牛乳もきちんと必要な分だけカップに注いで、冷蔵庫にしまってくれている。

僕はそれを見て機嫌のいい鼻声を出し、ソファーに腰かけた。


朝食を用意してくれるフレイキーの背中を見ていると、いつもじりじりとした感情に襲われる。僕は毎回それに耐えて、気付かないふりをする。
フレイキーが来てくれるのは本当にうれしいのだけれど、その反面とても怖くなる。
彼女(フレイキーはインターセックスなのだけど、一見は女の子だから僕はそう呼んでいる)がもし僕の前から消えたらどうしようだとか、ほかの人を好きになってしまったらどうしようだとか。

だけど、いつもおびえてオドオドしている彼女を見てると、やっぱり自分が守ってあげなくちゃ、なんて思う。

「ランピー、これでいい?」


あぁ、嘘だ。
コーヒーとサンドイッチと、少しのビスケットとミルクをお盆に乗せて、僕の前まで運んできてくれたフレイキーの笑顔を見て思う。僕が本当に怖いのは、僕が彼女を虜にしてしまうことなんだ。
虜にして、ずっと僕のそばにいさせて、そして誰の目にもつかないところへ置いておきたい。守ってあげたいだなんて建前で、本当はただ自分のものにしてしまいたいだけなんだ。
その君の笑顔を僕だけのものにして、こころもからだもすべて僕しか見れないようにして。

「サンキュー!じゃ、一緒に食べようか」
「うん。食べたら、今日はどこか遊びに行く?それとも、お仕事があるの?」
「えーっとねぇ。」

本当は、僕は彼女を僕のものだけにしたい。だけどそんなことをしてしまうのは間違っているし、僕がそれ以上に願うのは、フレイキー自身の幸せなんだ。

だから。


「あのね、もっと、ずーっとこうやって、ランピーと一緒に、いれたらなぁって思うんだ…」
「アハッ、ありがとう。」
「ほんとだよ、ぼく、ランピーとならずっと一緒にいてもいい。ずーっと、ずーっと一緒に、いても・・・」
「フレイキーが、もっと大人になったらね。」
「もう、いっつも、そう言うんだから。」

ぷぅと膨らんで少しいじけたフレイキーに、

「そうかなぁ。」

(僕は今日も嘘を吐くんだ。)


END

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