訓練兵に与えられる部屋は大部屋で、例外なく何人も一緒の部屋で寝起きする。
今日も食堂から浴場のお決まりの順番で皆と移動していって、最後に部屋へ戻って寝る。

なのに、僕たちの部屋の前にはちょっとした人集りができていた。

「ライナー、どうしたの?」
「おお、アルミン…静かに…」
「うわっ、マルコ?耳を塞いで蹲って、体調でも悪いの?」
「…ジャンが……」
「うわ!ジャンとなまえ、やってんじゃん!」
「エレン!静かに!」

ドアに貼り付いて隙間から中の様子を見ている皆に習って僕も覗くと、ジャンがベッドの上でなまえの胸を揉んでいるところだった。

「すげぇ…えっろ…」
「なんでなまえもよりによってジャンなんかと」
「静かに、バレるだろうが」







残念ながら、さっきからバレてるんだよ。
だからそのドアからはなまえの背中しか見えないだろ?

「や、ああ…ジャン…」
「何が嫌なんだよ、ここ立ってんじゃねぇか」
「ひゃあ!だめ、摘まんじゃだめ…っ」

こんな大部屋に詰め込まれていても思春期の野郎ばっかなんだから、知りたくもない他人のズリネタなんかもうっかり知ってしまうこともある。
自分の彼女がオカズにされたり猥談の時に名前が挙げられるのは不快だが、妙な優越感もある。

お前らが普段拝みたいと言っているなまえの胸を好きなように触って、いつも下ネタの一つも言わない唇を舐めて吸って…ああ、最高!

恐らく104期で一番精液を搾り取っているこの胸の谷間や先端に、俺だけが触れられる優越感。

おまけにあいつらからは見えないだろうが、なまえは向かい合って俺の膝に座っているだけじゃない。
ちゃんと入ってるんだよ、中に。

なまえの声が大きくて聞こえてないのか、それともふわりとしたスカートで隠されているから見えないのか。
童貞のお子ちゃまには見えていたとしてもわからないだろうがな。

「っふ、う…ジャン…すき…」

聞いたか?
童貞の皆さん聞こえましたか?

なまえが俺を好きだと言って縋り付いてくる。
よりによってなんで俺と、なんてわからないが、なまえは俺が好きなんだとさ。
俺はその3倍くらいは好きだけどな。

ぱっくりと開いた口に噛み付いて、舌を差し込むと遠慮がちに絡ませてくる。
ぷっくりとした唇とは対照的に、薄くて平たい舌は甘くて温かい。

しばらくキスを続けていたら、ドアの前でガタンと大きな音がした。

「ひっ…な、なに?」
「大方エレンが腰抜かした音じゃないのか?」
「なんで、エレンが?」
「エレンだけじゃない、104期の男は大体いるんじゃないのか?」
「やだ…離して、ジャン!恥ずかしいよ…」
「何が恥ずかしいんだ?やだって言いつつギッチギチに締め付けて今更なんだって?」

恥ずかしさやら緊張やらで身体を強張らせると、連動して締め付けてしまうことなんてわかっている。
でも、わざと言ってやればなまえはもっと締め付けるし、荒い息の合間に少しだけ声を漏らす。

そういう知識も貧しければ、下品な物言いにも慣れていない。
でも賢いなまえのことだから何度も何度も行為を繰り返すうちに、俺の言葉にすら反応してしまうようになってしまった。

「また締まった」
「やだ、っ!言わない、で…!」
「明日からどんな顔してあいつらに会えばいいんだろうな?」
「ジャン、お願い…っ!」
「ここで止めても見られた分は消せねぇけど?」

見られたって言っても後ろ姿くらいで決定的なオカズなんて与えてない。
それでも勿体無いと思うし、それに気付かず焦るなまえは可愛らしい。

「あいつら驚くだろうなぁ、まさかなまえが夜中に男子寮まで来てこんなことしてるなんて」
「やだぁ…」
「嫌って顔してから言ってみろよ、ほら」
「うう…だって、ジャンのせいだもん」
「俺が何したって?」
「ジャンが好きだから、一緒に居たいし、こういうこともしたくなっちゃうの…」

最後の方は消えそうなほどの声で、とてつもない爆弾を落としてきた。
真っ赤な顔で泣いて、本当にこの表情を俺だけが独占できてよかった。

「…くっそ、掴まってろよ」
「え?やだ、ジャン!止めてってば、あ…っ」
「ヤダヤダ言ってても、離してくれねぇんだから無理な話だろ」

首に手を回して抱きついてきたなまえの腰を掴んで、今まで以上に揺さぶった。
何度か繰り返せば、派手な声を噛み殺せずになまえが達する。
そんななまえの奥に、熱を孕んだ視線を投げてくるあいつらを見て、俺も後を追う。

最初で最後の人前での行為は、独占欲と優越感をこの上なく満たす物だった。





「お前ら、ドアの前で何やってんだ?」
「ジャ、ジャン!」
「いや、そういうジャンだってこんな時間までなまえを男子寮まで連れ込むなんて、教官にバレたら…」
「部屋で少し喋ってただけだって。でも急に体調悪くなって、落ち着くまで待ってたら消灯時間を過ぎただけだ。なあ、なまえ?」
「…う、うん……」

平然とそう宣ったジャンの隣で、なまえはガクガクと脚が震えている。
可哀想に、俯いていてもわかるくらいに顔が赤い。

僕やマルコは何でも無いフリを精一杯しているけど、エレンやコニーは挙動不審な上に前屈みだ。
嘘をついてあげるのだって、優しさなのに。

「じゃあ教官に会ったらちゃんと言っておくが、なまえも訓練で疲れているならちゃんと休むのも大切だぞ」

流石ライナー!
顔色一つ変えずに、かつ何でもなかったかのようにその場の空気を和ませる。
なまえもちらりと顔を上げて、「もしかして気のせいだった?」みたいな表情をしてみせる。

そうだよ、さっきのはジャンが君に意地悪してみたかっただけの小さな嘘だよ。
だから大丈夫、明日からも何も気にしなくていいんだよ。

「あれ?部屋がすごく生臭い…誰か知らないけど、こういうことしたらちゃんと換気しておいてね」

ふらりと現れたベルトルトの一言によって僕らの努力は全て消え失せた。





.
※前サイトでのリクエスト
念の為に申し上げますと、ベルトルトさんは大好きです。
GRANRODEO/ROSE HIP-BULLET
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -