ううう…助けてください師団長!


今夜は商会主催のパーティがあって、私の班が会場の警備に当たる。はずだった。
普通の警備なら団服なのに、女性兵士の服はドレス。

どうやらただの警備ではなさそうだ。

班長が言うには、この手のパーティに参加した若い女性がいつも数人ずつ行方不明になるのだそうで。
そこまで言われれば、私達は囮であることが分かる。


でも、頭で理解できていても、身体が動かないことだってある。

「おや、見慣れないお嬢様だ…ここへは初めてですか?」
「え、ええ…」
「失礼ですが、ご結婚はまだのようですね?こんなに綺麗な手が自由なようだ」
「お上手ですね…」

金色の髪にグリーンの瞳。
落ち着いているけれど、このパーティの参加層からすればかなり若い方だ。

だいたい30歳くらい?
とても整った顔だけど、優雅な仕草で左手を握られると寒気がするし吐きそうになる。

ふと手を離したと思えばそのままウエイターからグラスを受け取って、私に差し出す。
さくらんぼの浮いた、泡の弾ける綺麗な色のドリンク。

「こんなにセクシーなんだ、お子様じゃないよね?」
「ええ、ありがとうございます」
「まるで運命みたいだ…この出会いに乾杯」

気持ち悪い。
こんな台詞、よくも笑顔で言えるなぁ。

グラスを重ねて口をつけると、可愛らしい見た目に反して度数の強いお酒だった。
ふわっと全身の血が熱くなる。

「おっと、大丈夫?もしかしてお酒に弱かったかな?」
「いえ、ただ少し久しぶりに飲んだので…」
「そう?あそこの椅子まで歩ける?座った方がいいかもしれない」

するりと腰に回された手が不快だったけど、指された先の椅子までの少しの間なら我慢できる。
そう思ったのに、椅子とは違う方向へと誘導されていく。

目はくるくる回るし、声は上手く出ない。
早く、班長たちに助けを求めないと。

でも思い浮かぶのは、師団長。
おかしいな、ここには居ないはずなのに。

「可愛いね、やっぱりベッドで休もうか?」
「保護者付きでよければ、だがな」
「へ?うわっ!おい!離せ!!」
「後は頼んだ。俺は介抱に当たる」
「し、だんちょ…」
「バカかお前は。誰がハニートラップまで指示したんだ?あ?」
「ふぐ…うー…!」

鼻を摘まんで叱ってくるのは、間違いなく師団長。
それも団服ではなくてタキシード。
酔っ払いすぎて幻でも見ているのだろうか?

ひときわ大きく頭が揺れたと思ったら、視界にはお尻が広がった。
これは、もしかして、担がれている?

「おら、大人しくしてろよ」
「師団長っ!」
「はいはい、急ぐからなー」

ぱたぱたと私のお尻に叩かれているような感覚が…
この体制だと師団長の顔の横に私のお尻があって、叩いているのは彼の手で、恥ずかしすぎる。





ほとんど投げ込まれた先は、馬車?
身体を起こしたらそのまま奥へと押し込まれて、師団長まで乗り込んできた。

ブラックタイを足元に落として、ボタンもいくつか外す。
こういうの、大人って感じで好きだな…なんて思ってしまう。

ほんの少しだけぼんやりしていたら、座っている師団長に向き合う形で膝立ちさせられた。
近くなった顔がいつもより不機嫌なのはどうしたものか…

「なまえ、俺は怒っているんだが、理由は説明できるか?」
「えっと、酔って貴族の方に迷惑をかけて、」
「あれは貴族じゃねぇ。若い女を捕まえては売り飛ばしていた例の犯人だ」
「えっ?じゃあ私、売られるところだったんですね?」
「ああ、食い尽くされた後にな」

食い尽くされる…どこのなにを?
なんてぼんやりした頭で考えていたら、師団長の手が胸元のドレスを引き下ろした。

「ひゃああ!ちょっと!何するんですか!」
「お前、あのままだったらあの優男に同じことされてたんだぞ?それともあれか、俺じゃ不満だったか?」
「っ、ごめんなさい!師団長が助けてくれなかったら私…」
「そうじゃないだろ?ここには二人きりなんだが?」

意地の悪い言い方だと思う。
助けてもらっておいてなんてことを思うのだと反省もしているけれど。

「ナイルさん、ありがとうございました」
「ん、よくできました」

私は師団長に憧れて憲兵団に入って、ナイル・ドークという一人の男の人に惚れて、気付いたら付き合っていました。
仕事では廊下ですれ違うかどうかなのに、団服を脱げば名前で呼び合っているんだから、なんだか不思議な感覚。

頭を撫でていた手の心地良さに目を瞑ると、その手が後頭部に回って引き寄せられた。
唇にヒゲが当たって、それがキスだと気付く。

「なあなまえ、悪いことをしたら罰を受けるべきだとは思わないか?」
「思います…けど…?」
「お前の罰は、声を出さないことだな」

狭い馬車の中でまた身体が浮いたと思ったら、今度はナイルさんの膝の上に跨る形になった。
勿論、向かい合うようにされたから、彼の顔の前には曝け出されたままの私の胸。

恥ずかしくて手で隠そうとしたら、掴まれて肩に置かれる。

「俺の身体から手を離すな。まあ多分、そうせざるを得なくなるだろうけどな」
「え…っと、ナイルさん?」
「馬車を出してくれ」

そう声を掛ければ、ゆっくりと馬が動き出す。
カラカラと車輪の音、馬の足音、あとは街の賑やかな声。
色々混じって、ナイルさんと話す時は耳元に口を寄せるか大声を出すしかない。
どっちにしろ、話すことを禁じられているんだけど。

胸にぺたりと大きな手が張り付く感覚。
すっぽりと収まりきってしまう胸に、ナイルさんが「ちっせぇ」と言ったのは分かった。
毎回毎回同じことを言われているから、唇の動きで分かるんですよすみませんね小さくて!

その足りない胸を寄せて揉んで、文字通りのぺったんこレベルから下着によるサポートを必要とするレベルまでにしてくれたんだから、そのまま谷間が出来るレベルにまでして下さいよ!

「無い胸を気にしてるところがいいんだろうが」

耳元でそう言われると、吐息が当たって身体が跳ねる。
それと同時に、撫でていただけだった指が一箇所を執拗に捏ねてくるから、思わず頭に抱き着いた。

すると、ぬるりとした湿った熱が這うのがわかる。
少し腰が引けてしまうと、片手がお尻に回って引き寄せられた。

お尻を触る手はもう普段からセクハラしまくっているのではないかと疑うほどにスムーズに動く。
まあるく撫でて、下から持ち上げるように揉んで、くすぐったいやら気持ち良いやら。

マッサージみたいな感覚に意識を取られていると、お尻から手が離れてスカートの中に入り込む。
腰の辺りを撫でられていると思ったけど、その動きに心当たりがあった。

「幼児体型のクセに紐パンって、お前なあ…」
「だって!ヒッチがドレスには紐のやつを合わせるのがマナーだって、」
「何回騙されれば気が済むんだよ…しかも年下の!後輩に!アホか…」
「アホってそんな!こんなドレス着るの初めてだったんですもん…」
「慣れてくれねぇと困るな、これからこういう機会が増えるのに」
「えー、また囮です、か…やっ、ん…」

だからお前はアホなんだよ、そう聞こえたような。
忘れかけていた胸への刺激がまた開始されて、加えて下着で隠されていたところに遠慮なく指が触れる。

痛みを感じることなく、的確に気持ち良くなるところを一番気持ち良い方法で触ってくるものだから、ナイルさんの過去なんかを想像しては一人不愉快になる。
だって、私じゃない女の人とこういうことして技を磨いてたとしたら、それってどう考えても面白くない。

意識が逸れるのを、ナイルさんは結構嫌う。
何も言わないけれど、いつもより少し荒々しく指が入り込んできて、浅いところから順番に広げていく。
いきなり指を二本差し込まれることに慣れてしまった自分が怖い。

「あ…やあ…ナイル、さん…っ!」
「あーあー、垂れてきてんぞ?」

そんなの、足を伝う感覚でわかってるので言わないでください!
ずるりと指を引き抜かれて、ずっと立ち膝だった腰を下ろすように導かれる。

その先の行為くらい想像できる。
ドレスの裾からチラリと見えたそれは、すでにゴムを装着してある状態だった。
大人って、本当狡い。

「ひ、あ…ああっ!ナイルさん、っう」
「お前、喋るなって罰を完全無視だな」
「だって、ナイルさんの…あつ、い…」
「答えになってない。少しボリューム落とせよ?罰がどうこうの前に、聞こえたらモラルの問題だ」

そうだ、いくら周りが賑やかで走行音もするような馬車だからって、いつ聞かれてもおかしくないような距離に御者がいる。
そんなスリルで余計に興奮してしまう私も、充分オトナなのかもしれない。

「バッカ…急に締めるやつがあるか」
「わかんな…自分じゃわかんないです、よ…」
「舌噛むぞ」

そんなに激しいキスは怖い、なんて思ったら、肩と腰に回った手が力強く絡みつく。
一度目でいきなり奥まで貫かれて、油断していたぶん、師団長の肩に爪を立ててしまった。

「ドーク師団長殿!この先、道が不安定ですので少し揺れますよ!」
「っ、ああ、来た時もこの辺りで揺れたから、覚えている」
「それは失礼しました」

びっくりした、本当にバレてしまったのかと思った…
しかし安堵する間も無く、ナイルさんはまた激しい律動を開始する。
馬車の揺れもダイレクトに伝わってくるから、予期しない動きになって頭のネジが一つくらい落ちちゃいそう。

「そうなったら責任取ってやるよ」

もしかして、声に出てた?
それにしても責任って、そういうこと?

耳元で舌打ちが聞こえたと思えば、これ以上ないくらいに揺さぶられる。
内臓が掻き回されてしまうかのような感覚だ。

私だけこんな風に乱されるのが悔しくて、首筋に軽く噛み付いた。
くっきりと歯型が残ってしまって、これは馬車が揺れすぎたせいにしておこう。











憲兵団本部に着く頃には、乱れた髪は自然に見えるようにゆるく纏め直され、ドレスもきっちり元通りだった。
手際の良さにほれぼれ…することなんて無く、やっぱり歴代彼女さんたちが気になって素直に喜べないでいる。

「なんだ?どこか痛むのか?」
「何でもないです…」

ほら、ナイルさんだって気付くほど顔に出てしまっているなんて。
一回りとまでは言わないけれど、ちょっと年の差がある私たち。
どこまでも子供っぽさが抜けなくてイライラと悲しいのが混ざり合っている。

「お前、今考えてること言ってみろ」
「嫌です…」
「どうせしょうもないことでウダウダ悩んでるんだろ?」
「いつもそうやって子供扱いして!」

ナイルさんの部屋だという妙な安心感からつい大声を出してしまった。
もう夜中なのに…というか、こういうところが子供っぽくて余計に嫌だ。

「俺は子供に手を出すほど悪趣味じゃねぇよ」
「ロリコンはみんなそう言うんですよ…」
「考えてもみろ、俺の方が長く生きてんのにガキだったらそれこそ嫌だろ?甘やかす楽しみってのも大人にはあるんだよ」
「…ナイルさん!」

そうだ、私が子供っぽいんじゃなくて、この人が私を甘やかす才能に満ちているだけだ。

「姉ちゃん達の下僕やらされてたなんて言えるかよ」

ぼそぼそと聞こえたそれは、私の精一杯の背伸びとして聞いていないことにした。




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