刀の時代は終わったのだと、そう直感で感じた。もう太刀打ちできない。勝てる気がしないの。


それをわかっているのか、認めたくないのか、永倉組長は懸命に隊士を鼓舞しながら戦っていらっしゃる。組長、もう駄目ですよ、私達。


「名前、お前は大丈夫か?」

「えぇ、何とか」


いつものように薄く笑みを浮かべて、組長に言葉を返す。

組長が私を気にかけてくださるのは、私が新撰組唯一の女隊士だから。女という地位に甘えたくはないが、戦場で力の無さを感じてしまうのも事実だから。男と女の力の差は到底埋まるものじゃないことを、改めて痛感した。

永倉隊長はそのことを気にかけてくださって、組長直々に二番組に引き入れていただいた。


二番組に入ったその日から、私は永倉組長の背中を守る為に生きている。


「組長も大丈夫ですか?お怪我はありませんか」

「あぁ!背中はこうして名前が守ってくれてるからな」


太陽のような笑顔はいつも眩しかった。眩しくて、いつも目を反らしてしまう。

けど、今日は反らさない。しっかり、目に焼き付けていたい。悔いが残らないように、心が折れないように。


「永倉組長。私、すごく幸せです」

「ん?どうしたんだ、急に。てか、今言う話じゃないだろ」

「永倉組長と一緒に巡察して、戦って、隣にいて。いつもいつも幸せでした」

「お、おい…名前?」


気付かれてしまっただろうか。けど、伝えなければ。あなたが、いなくなる前に。



「永倉組長。私があなたの背中を守れなくなったら、遠慮なく捨ててくださいね」


繋がれたこの糸を、あなたにくっついているこの気持ちをどうか、




斬り落としてね。
(何の躊躇いもなく、ただ一振りで)



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