あたまがいたい


効かない薬に意味はない。
臨也は苛立ちながら、頭痛薬の瓶を床に投げつけた。
それは割れるわけでもなくフローリングに少しの傷をつけ、鈍い音を立てて転がった。
ズキズキと痛む頭を押さえ、臨也はソファーに寝転がる。
背後で扉が開く音がしたが、臨也は気付かない。
ぺたぺたと裸足の音を立てて室内に入ってきた人物は、真っ直ぐにソファーの側まで来た。
臨也は薄く目を開ける。
金髪の綺麗な顔をした男がじぃっと臨也を見下ろしていた。
「…シズちゃん?」
静雄はソファーの傍らに跪くと臨也の額に手を触れる。ひやり、と冷たい手の感触がして臨也には心地好い。
ゆっくりとその手が頬に触れ、唇に口づけが下りてきた。
静雄から口づけられるのは初めてで、臨也は少し目を見開く。
静雄は唇を離すと臨也の頭を撫でた。優しく髪の毛を梳くように。
ずっと撫でられて、臨也は少しずつ頭痛が治まっていくのを感じる。意識がウトウトし始めた。
「おやすみ」
静雄の優しい声がする。
臨也はそれに頷いて、やがて眠りに落ちていった。

100731 12:19
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