SIESTA





臨也は怠惰が嫌いだ。
暇も嫌いだし、無駄なことも嫌いだ。何故大抵の人間はだらけるのか分からない。暇だ暇だと言うのも理解が出来ない。暇なら何かをすればいい。部屋の片付けや勉強や、人間はすることがたくさんある筈だ。
暇ではない臨也は、今日も予め立てていた計画通りに動いていた。勝手に作った合い鍵を使い、とある小さなアパートに入る。
今日は休みだと言っていたから、きっと家主は在宅だろう。中を覗くと、家主の青年は床に寝ていた。日に焼けて色が抜けた畳に、長い四肢を投げ出して。窓が開いているのだろうか、風で金髪が揺れている。
「シズちゃん」
呼んでみたが反応がない。完璧に熟睡中だ。
無理矢理起こすような野暮はせず、臨也は静雄の隣に座った。
寝息の度に金髪が揺れ、胸が上下に動く。こうして見ると寝顔は酷く幼かった。高校生みたいだ。
良くこんな床で寝れるものだ。
臨也は呆れながらも携帯を取り出した。静雄が起きるまで、携帯で仕事をしよう。
春の暖かな陽射しが部屋を照らす。鳥の鳴き声がどこからか聴こえてきた。空を飛ぶ飛行機の音。木々の葉が揺れる音。臨也は思わず手を止めて窓を見た。
窓の向こう側はマンションが見えている。どこにでもある住宅街の風景。池袋じゃないみたいだ。
すうすうと聴こえる静雄の寝息。窓が開いたままだと風邪を引くかも知れない。臨也は窓を閉めると、ベッドから毛布を持ってきて静雄に掛ける。
ふと思い付いて、静雄の隣に寝転がって見た。部屋は決して広くはないが、家具が少ないせいで男二人が寝転がれる。臨也はぼんやりと窓を見上げた。
寝転がって見ると、窓から見える風景は違った。青い空。白い雲。太陽が眩しい。風で電線が揺れている。
なるほど、これは眠くなるかも知れない。
臨也は赤い目を細め、気分が穏やかになってゆくのを感じた。もう仕事をする気は起きず、手にしていた携帯を仕舞う。
「…ん…」
静雄が寝返りを打ち、臨也の方を向く。黒く長い睫毛が、頬に影を作っていた。
投げ出した互いの手が触れる。臨也は静雄の長い指先を視線に捉えると、ゆっくりと握ってみた。
…ま、たまにはこんな時間もいいのかも知れないな。
臨也はそう思いながら、瞼を徐々に閉じてゆく。
いつの間にか眠りに落ちて行った。





2011/02/18 11:39
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