席替え 新羅ver





この学園で永劫に語り継がれる程に仲が悪い二人の青年は、その仲の悪さ故に学校側が同じクラスにすることは決してなかった。
しかしそれは入学して知り合った時点から発生するものなので、当然本人達は勿論、学校側も入学前はこんなに仲が悪くなるなんて分かる筈もない。そして新入生のクラスは入学前から決まっている。──…つまりこの酷く仲が悪い二人は、高校一年間だけ同じクラスだったことがあった。
殆ど授業にならないクラスだったなあ、と新羅はその当時を思い出す。それなのに当の本人達は成績が良いのだから、クラスメイト達は堪ったものじゃないだろう。誰も表立って文句を言う勇気がある人間なんて居なかったけれど。
幸いと言うか何と言うか、座席はあいうえお順だったので二人の席は離れていた。しかしずっと同じ席ではクラスの士気も下がるので、入学して一ヶ月半後に席替えをすることになった。
クラスメイトの殆どが、あの二人と近くの席になることを恐れていただろう。新羅は別にどちらでも良かったので我関せずだった。
公平にくじ引きで、と言うルールの中、皆がビクビクとくじを引く。
「臨也、引きに行かないの?」
教壇に置かれた白い箱を指差して新羅は問う。その時新羅は臨也と席が近かった。
「席なんてどこでもいいし、天に任せるよ」
気のない返事をし、ちらりと視線を教室の端へ向ける。釣られて新羅も見れば、視線の先には金髪の青年がいた。
静雄は同じく席には興味がないらしく、頬杖をついて窓の方を見ている。つまらなそうに欠伸までしていた。
くじも残り少なくなったところで臨也は立ち上がり、新羅もその後に続く。
箱に手を入れ、紙に書かれた数字を見ると、臨也は天敵の方を向いた。
「シズちゃん、早く引きなよ」
このクラスで(教師含め)静雄に声を掛けれるのは臨也と新羅だけだ。教室がシーンとなるのと同時に静雄が不機嫌そうに前を向いた。
「変な呼び方すんなっつってんだろーが」
ぶつくさと文句を言いながらも、素直に静雄が立ち上がる。クラスメイト達は息を呑んでその様子を見守った。
「俺、シズちゃんと近くの席がいいなあ」
臨也が口端を吊り上げて笑う。
「…俺は絶対に嫌だ」
静雄の機嫌が下降したのが分かり、教室は更に静寂に包まれる。その二人の間でニコニコしている新羅が異様に見えた。
その後、席が決まったわけだが、クラスメイト達と教師は運命を呪ったかも知れない。席は静雄、新羅、臨也と見事に横一列に並んでしまった。それでも間に新羅が入ったことで、争いは少しだけ減少する。

「シズちゃんの隣が良かったなあ…」
「うるせえ、死ね」
「何なら交替する?」

新羅の提案はクラス中から却下された。


2011/02/17 22:15
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