遊ぼ。





覚醒して直ぐに見えたのは、薄暗い天井だった。
少しだけ驚いて身を捩ると、体に掛けられていた毛布が床に落ちる。
寝てたのか。
静雄は瞬きを一度すると、ゆっくりとソファから身を起こした。部屋は薄暗く、窓から入り込む太陽の光りは茜色だ。いつから寝たのか分からないので、どれくらい寝ていたのか見当もつかない。
床に落ちた毛布を拾い、綺麗に四角に畳んだ。ふとテーブルの上に読み掛けの本が置いてあるのに気付く。
そういえば本を読んでいるうちに寝てしまったんだった。あの男の部屋の書棚にあったので読んで見たが、それは静雄の趣味には合わなかった。だから退屈でつい眠ってしまったのだろう。
欠伸を一つし、静雄は立ち上がる。手元のリモコンを押して、部屋の照明をつけた。急に部屋が明るくなるのに、眩しくて目を細める。
臨也はどこだろう。部屋のパソコンには電源が入っていないし、仕事はしていないようだ。
静雄はリビングを出ると、臨也の寝室を目指した。その部屋は廊下の一番奥にある。
「臨也」
小さくノックをするが、返事がない。静雄は少しだけ躊躇うが、思い切って扉を開けた。
部屋の中はリビングよりも暗く、グレーのカーテンは閉められている。隙間から僅かに、夕陽の明かりが床を照らしていた。
臨也はベッドの上に寝転がり、こちらに背を向けていた。近付いて見ると、微かに肩が揺れている。どうやら眠っているらしい。
珍しい。
臨也が昼寝とは。
静雄はベッドが揺れないように気を使いながら、臨也の横に腰を掛けた。顔を寄せれば、臨也の寝息が聴こえる。
夕方になって部屋も冷えてきた。何か掛けてやった方がいいかも知れない。
静雄は先程の毛布を思い出し、取りに行こうと立ち上がった。臨也から離れようと一歩足を踏み出した途端、手首を掴まれた。
「!」
そのまま体を後ろに引かれ、襲って来るであろう衝撃に目を瞑る。が、衝撃はなく、緩やかに抱き留められただけだった。
体をベッドに押し倒され、起き上がれないように腹に乗られる。目を見開けば、間近に赤い目があった。
「…おい」
「おはよう」
臨也の赤い目は細められ、その口許には笑みが浮かんだ。
こいつ…起きてやがったな。
静雄は舌打ちをした。
「シズちゃんが俺を放っといて寝てるから、俺も寝ちゃってたよ」
口端を吊り上げて、臨也は笑う。その手は静雄の頬に触れ、親指で乾いた唇をなぞった。
「嘘つけよ」
大体静雄を放っておいてパソコンばかり弄っていたのはそっちだろうに。
「寂しかった?」
「死ね」
「あ、そんなに寂しかったんだ?」
「お前、人の話聴いてんのかよ」
静雄は呆れ、目を逸らす。顔が少し熱いのは、決して図星を指されたからではない…筈だ。
「拗ねないでよ。遊んであげるからさ」
臨也は笑ったまま、静雄の髪を優しく撫でる。静雄はそれに何も答えなかった。自分の顔が赤いのが分かり、それが酷く癪に障る。
「…何して遊んでるくれんだよ」
静雄が不機嫌に問えば、臨也はわざとらしく小首を傾げた。
「そうだなあ、取り敢えずお医者さんごっこでもする?」
「殺すぞ」
「冗談だよ」
半ば本気で言った静雄に、臨也は声を上げて笑った。





2011/01/28 15:57
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