ダラーズ掲示板の活用方法




「静雄」
名前を呼ばれて振り返ればストローハットの男。
「あー。えーっと…名前なんだっけ」
「六条千景。いい加減覚えようぜ…」
千景は呆れたように溜息を吐く。「せっかく会いに来てんのによ」
「何か用なのか」
静雄は吸っていた煙草を消すと、小首を傾げた。
「今暇か?」
「何で?」
「デートしよう!」
今まで幾人の女を虜にしてきた笑顔で千景は言った。
「……は?」
静雄はポカンと口を開ける。
「取り敢えず映画とか食事とかどうだ?」
千景は真顔だ。
対して静雄はコメカミに血管が浮き上がって来る。
「手前、ふざけてんのかぁ?男の俺にデートだの気色悪いこと言ってんじゃねえよ」
「いや俺は真面目だぜ。飯は勿論奢るし」
「奢り…」
静雄の心がぐらつく。
「静雄が好きなもん食べに行こう。何でも奢る」
千景はさりげなく静雄の肩に手を回し、ニコニコと。


「あれってシズちゃんとろっちーじゃない?」
狩沢が指差した方を見れば、確かにストローハットと金髪の青年がいた。
「本当っすね」
「なーんか怪しい雰囲気…」
「おい、変なこと想像すんなよ」
門田は呆れる。
「でも門田さん、あれ…。静雄さんのシャツん中に手入れてるっすよ」
「きゃあああああ!写真撮ろううう!」
「静雄、気付いてなさそうな…」
門田は少し心配になった。これはやばいような気がする。
「狩沢」
「なになに?」
「その写メ、ダラーズの掲示板に上げてみろ」


「取り敢えず、服でも見ないか?」
「は?何で?」
「デートにその格好はないだろうさ」
千景はバーテン服を指差して。「それ仕事着なんだろ?ON、OFFはちゃんとしようぜ」
「そういうもんか」
そうかも知れない。
たかがプライベートな事で弟からもらった大事な服を着るのは…。と、静雄は少しずれたことを考える。
「なんなら新しい服でも買ってやろうか」
千景の手が静雄の腰に回される。
「何でそんな引っ付くんだ?」
「いやほらサイズ見ないとな」
「別に服とかいらねえし」
静雄が眉間に皺を寄せて体を離そうとした時、

「シズちゃん」

大嫌いな愛称で呼ばれ、顔を上げる。
「臨也」
「なにしてんの」
黒髪に真っ黒なコートの男は不機嫌を隠そうともしない。
「何って、」
「さっさと田舎に帰れ、ガキ」
臨也はきつい眼差しで千景を睨みつけた。
「は?あんたに関係ねえだろ。オッサン」
「いや残念ながら関係あるんだよねえ。この金髪の喧嘩人形さんは俺のだし。あんたには毛一本だってあげられないわけ。てか眺めるのも駄目だ。見んな、クソガキ。あんたの目を潰してやろうか。大体俺はシズちゃんと同級生で25前だ。同級生ってことはシズちゃんのあんな時代やこんな過去を知ってるんだぞ。お前みたいなパッと出の新キャラとは違うんだよ」

「静雄、こっちこっち」
臨也と千景がぎゃあぎゃあと争ってる間に、門田たちは静雄をそこから助け出した。
「何なんだあれ。あの二人何で喧嘩してるんだ?」
静雄は首を傾げる。
「掲示板を見て走ってきたんだろうな…」
「イザイザやるぅ」
「何だか涙が出てきたっすよ」
三人が頷くのに、静雄は???とまだ分かっていない。
「シズちゃんがイザイザに愛されてるってことだよ」
きゃー!と狩沢は黄色い悲鳴を上げ、静雄は一瞬にして真っ赤になった。
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