ねえA





眩しい。

静雄はゆっくりと目を開いた。
窓を見上げれば青い空が見える。窓から入り込む太陽の光がちょうどベッドを照らしていた。昨夜、カーテンを閉め忘れたらしい。
のろのろと体を起こし、ベッドの脇の時計を見る。時刻は7時ちょっと過ぎ。休日に起きるにはまだ少し早い時間だった。
そう思ったが、静雄は結局起きることにした。まだ眠かったけれど、せっかく目が覚めたのだ。どこか遊びに行くのも良いかも知れない。
顔を洗い、着替え、携帯を取り出す。何度目かのコールでやっと相手が出た。
臨也はあからさまに不機嫌な声で応対する。
『俺、まだ寝てたんだけど?』
「もう朝だぞ」
『まだ8時前だよ』
ふわあ、とわざとらしく欠伸をする臨也に、静雄はちっと舌打ちをした。
「お前どうせ暇だろ?どっか行こうぜ」
『は?』
静雄の誘いに驚いたのか、暫く臨也は黙り込む。静雄は携帯を握る手に少しだけ力を込めた。
『…どっかってどこ?』
「どっかだよ」
『つまりは、』
やっと驚きから我に返った臨也が、少しだけ戸惑いがちに問う。
『デートに誘われているのかな、俺は』
「デートってなんだよ」
『そう言うことじゃないの?』
そんな臨也の声には揶揄が含まれていて、静雄は僅かに顔が熱くなった。
「別に、そんなつもりじゃ、」
ああ、もう。
うざいうざいうざいうざい。恥ずかしくて耳まで熱い。
静雄は思わず通話を切ろうと携帯電話を耳から離した。
『いいよ』
聴こえて来る臨也の声。
ピタッと静雄の手が止まった。
『でもこんな時間じゃ、どこのお店もまだ開いてないよ。だから、』
うちにおいで。
そう話す臨也の声は優しかった。
「…出掛けようって言ってんのにか?」
『うちに来て、暫く経ったら出掛けようってこと』
「……」
通話を切ろうとしていた指を引っ込めて、静雄はまた耳に電話を触れる。
クリアに聴こえて来る臨也の声。
『まあ外だろうが家だろうが俺は、』
シズちゃんと一緒ならどこでもいいんだけど。
「…ばっ…、」
言われた台詞に耳まで赤くなった静雄は、思わずそのまま携帯の電源を切ってしまった。
顔が熱い。耳も熱い。
なんて事を言うんだろう、この男は!

そう思いながらも数十分後、静雄は結局新宿まで出掛けたのだった。


(2011/01/21/15:17)
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