1月20日





静雄はゆっくりと瞼を開いた。
太陽の明るい陽射しが、カーテンの隙間から部屋の中を照らしている。朝だ、と意識より先に体が認識し、静雄は瞬きを何度か繰り返す。
上を見上げれば薄いグレーの天井が見えた。見慣れた自分の部屋ではない。体に触れる清潔なシーツ。顔を枕に寄せれば、優しく甘い香りがする。静雄は自身の白い腕を見て、自分が裸体なのにやっと気付いた。
はっ、と一気に覚醒して身を起こす。腰にわずかな痛みが走るのと同時に、朝の寒い空気が体を震わせた。
「まだ寒いよ」
隣から声がして、温かい腕が伸びて来る。その腕に抱きしめられて、再び体をベッドに沈められた。
「…っ、臨也」
体を倒されて、ベッドのスプリングが揺れる。臨也の華奢な両腕は、そのまま静雄の肩を強く抱いた。
「今日は大寒なんだ」
臨也の声が頭上から聴こえて来る。その声は笑いを含んでいたけれど、抱きしめられているせいで静雄からは顔が見えない。
「大寒?」
「一年で一番寒い日さ」
「…へえ」
短くそう返答をするが、静雄の頭の中は酷く混乱していた。
なんで自分は臨也の隣に寝ているのだろう。
なんで抱きしめられているのだろう。
ズキズキと腰は痛いし、なんで裸なのだろう。
静雄の混乱など、臨也にはお見通しらしい。くぐもった低い笑い声を上げ、抱きしめていた体を離した。
「覚えてない?」
「な…にを…?」
顔を覗き込んで来る臨也の目はとても優しくて、静雄は無意識に顔が赤くなる。昨夜、この目で見詰められていたことを、不意に思い出してしまった。温かな腕も、熱い口づけも、掠れた声も。
「…俺…」
顔を赤くし、視線をさ迷わせる静雄に、臨也は笑う。
「思い出した?」
臨也の手が、優しく静雄の髪を梳いた。
「良かった。忘れられて無かったことにされたら困るしね」
抱き寄せられて、額に口づけられる。柔らかな臨也の唇。静雄はそれに身を震わせた。
ドキドキと心臓が煩い。
恥ずかしさで顔が熱い。
こんな寒くなければ、今直ぐに布団から抜け出して帰りたいくらいだ。
「きっとこれから毎年大寒になると、シズちゃんは今日のことを思い出すんだろうねえ」
からかうような臨也の声。
静雄はそれにますます顔を赤くし、小さく舌打ちをした。


(2011/01/20/16:44)


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