終止符







死ねばいいのに。


静雄が倒れていたその場所は、まだ血が広がっている。
赤い、朱い血。
雨は容赦なく降り注ぎ、血を洗い流してゆく。
臨也は傘も差さずにその場に佇み、じっと地面を見ていた。流れた血はどんどん雨水で薄まってゆく。血の匂いも全くしない。
「今度こそ、死ぬかな?シズちゃん」
呟いた臨也の声は低い。
口角を吊り上げ、目を伏せる。気分が昂揚していた。酷く機嫌が良い。愉しくて愉しくて堪らない。
腹を銃で撃たれたのだ。無事ではないに決まっている。そんな重傷な状態で歩けるのはさすがだった。
臨也にとっても旧友の闇医者の所へ行ったのだろう。あの闇医者は腕は確かだ。静雄が助かるのは五分五分くらいだろうか。例え痛みに鈍いあの体でも、大量出血をすれば人は死ぬ。
臨也は嬉しそうにまた笑う。
死んだら万々歳。死ななかったとしても、臨也にはそれはそれで良かった。またあの男で遊べる。次は何をして遊ぼうか。色々と策略を考えるのは愉しい。
雨のせいで視界が歪む。ぽたぽたと前髪から水が落ちる。コートが水を吸って重い。
臨也はそれでも、ただずっとそこに佇んでいた。
雨が流れて、まるで涙を流しているように見える。その表情だけは嬉しそうに笑みを浮かべて。
やがて完全に血が流された後、臨也はゆっくりと踵を返した。もう少ししたら、新羅の家に電話をしてみようと考えながら。

2010/12/29 19:38
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