手を繋ぐ






吐いた息が真っ白だ。
スン、と鼻水を啜り、静雄は空を見上げる。空は薄暗く厚い雲で覆われていて、今にも雨が降りそうだった。
朝に見た天気予報では、降水確率50%。傘を持ち歩くか悩む確率だ。結果、静雄は持って来ていなかった。
無意識に早足になる静雄の手を、後ろから伸びてきた手が掴む。
静雄はそれに驚き、足を止めて振り返った。
「なんだよ」
「歩くの早い」
臨也は不機嫌な顔をしてそう言い、静雄を掴む手に力を込める。
ぎゅうっと握られる温かい手。静雄はそれだけで、体温が上昇した気がした。
「離せよ」
「やだよ」
臨也は口端を吊り上げて笑い、そのまま手を引いて歩き出す。
「おい、」
「シズちゃんの手、冷たいね」
半ば強引に手を引かれ、静雄の頬が赤く染まる。こんな街中で手を繋ぐだなんて、知っている人間にでも見られたらどうするのだろう。
「別に見られてもいいじゃない」
前を歩きながら、臨也は笑う。
「シズちゃんは俺の物だよ、って言い回りたいぐらいだ」
「何言ってんだ。死ね」
悪態を吐く静雄の顔が、更に赤くなる。さっきまで冷たかった頬が、今は熱いくらいだ。
手を掴む臨也の力は強く、静雄を離さない。
静雄はそれに舌打ちをついて、臨也の手をそっと握り返した。


2010/12/21 22:08
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