LOVE LOVE LOVE






ソファに座る静雄の膝に、臨也は眠っていた。
静雄はひじ掛けに頬杖をついて、南側の窓から外を見ている。
窓が少し開いているのか、カーテンが時折ユラユラと揺れた。微かな風が入り込んでいるのだろう。
ちら、と膝上の臨也に視線を落とす。臨也は先程から全く動かない。狸寝入りだと思っていたのに、どうやら本当に眠っているらしい。
寒くないのだろうか。
人間は睡眠時、体温が低下する。起きている時は普通でも、眠っている時は寒く感じるわけだ。
窓を閉めた方がいいなと思うのに、静雄は動くことができなかった。動いたらきっと確実に、臨也は目を覚ましてしまう。
せめて寒くないようにと、静雄は片手を臨也の肩に回した。自分の温もりで、少しでもこの男が暖まればいいと思う。風邪など引かれたら、後味も悪いし。
頬杖をやめて、静雄は臨也の髪の毛を撫でた。漆黒のそれは、艶やかで指通りもいい。自分と同じシャンプーの香りがする。
長い睫毛は白い頬に影を落としていた。薄い柔らかな唇は、女みたいに赤い。本当にむかつくくらい、綺麗な顔だった。
指先でその頬に触れる。意外に柔らかい。唇に触れれば、吐息を微かに感じた。
この唇が自分に口づけて来るのかと思うと、静雄はくらりと眩暈がする。甘くて深い、臨也の熱いキスを思い出して、静雄はかあっと赤くなった。
慌てて手を引っ込めようとするのに、伸びて来た臨也の手に掴まれる。
「!」
静雄が驚いて臨也を見れば、臨也の瞼がゆっくりと開かれるところだった。
「おはよう」
臨也は静雄の手を掴んだまま、掠れた声を出す。静雄はそれに動揺し、目を逸らした。
「何してたの」
「…何が」
「擽ったかった」
臨也はそう言って、口端を吊り上げて笑う。きっと静雄の考えなんて全てお見通しなのだろう。その声は揶揄を含んでいた。
「何でもねえよ。起きたなら早く退け」
静雄は赤くなった顔を、自身の手で隠す。臨也はそれに低く笑い、静雄の首に腕を回した。
「おはようのちゅうは?」
「は?ふざけ…、」
るな、と続く筈だった言葉は、臨也の唇によって塞がれる。臨也は本当に眠っていたのか、口腔は酷く熱かった。
戯れるみたいに舌を絡ませたキスは、くちゅっと水音を立てて離される。
いつの間にか臨也によって体勢は逆転され、静雄の体の上には臨也が馬乗りになっていた。
「…夢を見たよ」
「……なんの」
「シズちゃんが出て来た」
臨也は静雄の前髪をかき上げて、額に口づけを落とす。
「夢でも現実でも俺はシズちゃんに夢中なんだね」
「…死ね」
「ははっ」
赤くなって悪態を吐く静雄に、臨也は声を出して笑った。


2010/12/05 14:50
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