「ねぇ」






眩しい。

臨也はゆっくりと目を開いた。
カーテンの隙間から入り込む光りが室内を照らしている。目覚めた場所は、フローリングの床の上。
臨也はぼんやりと体を起こした。硬い床で寝ていたせいで、体が痛くなっている。
隣を見れば、金髪の男が同じく床で眠っていた。裸のまま。
ああ、そうか。
臨也は思い出す。夕べ、まるで獣みたいにセックスをした。ベッドに行くのさえももどかしく、床に転がって。
洋服だって乱暴に剥いだ。そのせいで静雄のワイシャツはボタンが飛んでしまってる。後で気づいたら、きっと怒られるだろう。
高校生じゃあるまいし。
がっつき過ぎだ。
そう思うのに、静雄が相手だと理性が吹き飛んでしまう。昔から。
理知的ではない野蛮な行為は、臨也の最も軽蔑するところだ。なのに静雄相手には仕方がないと思う自分がいる。頭がいかれてるのだ、自分は。
この感情の名を臨也は知っていたし、これを今更否定する気は起きなかった。
まだ眠気は残っていたが、臨也は起きることにした。立ち上がり、大きな窓のカーテンを開ける。
途端に襲って来る眩しさに、臨也は顔を背けた。
太陽の眩しさで目覚める朝も悪くないな。
そんなことを考えながら静雄の傍らに座り込む。
金髪が朝日に反射してキラキラと光っていた。
どこかに出掛けようか。
せっかくの天気だ。静雄を連れて遊びに行くのも悪くない。どこがいいだろう。
勝手に予定を立てたならきっと怒るだろう。けれど結局いつも静雄は甘受する。静雄が臨也の言うことを聞かなかったことは実は殆どない。
手を伸ばし、金の髪に触れた。この存在が愛しくて苦しい。髪の毛に触れただけで。
恋をしているのだ、と自覚をしたのはいつだったろう。最近のような気もするし、初めて会った時にはもう分かっていた気もする。
「シズちゃん」
名を呼べば、僅かに身動ぎをした。
どこに出掛けようか。
君が一緒ならきっとどこも特別な場所になるけれど。
恋は盲目とは良く言ったものだと思う。この自分が、こんな風になるなんて。
取り敢えず起こそうか。
何か夢でも見ているのかも知れない。その夢にさえ、自分は嫉妬する。

「ねぇ、シズちゃん」

起きて。
早く俺を見てよ。


2010/12/02 23:22
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