お前の殺し方






カチ

カチ

さっきから臨也がナイフを出し入れしている。
静雄はコンクリートに寝転がって、黙ってそれを聞いていた。
疲れ切って体は動かない。今ナイフを向けられたら、それは皮膚を突き破って刺さるような気がした。
カチ
不意に、その音が止んだ。
顔を上げれば臨也がこちらを見下ろしている。逆光になっていて、表情は見えない。

「シズちゃん」
「なんだ」
「俺のこと好き?」

馬鹿なことを聞くものだ。
静雄は空の太陽に目を細め、手で光りを遮った。

「死ね」
「それは答えになっていない」

はは、と臨也の笑い声がする。

「俺もシズちゃんを殺したい」
「だから?」
「でも嫌いじゃないんだ」

臨也の言葉に、そうかよ、と静雄は目を閉じた。どうでもいいんだ、そんなことは。
大事なのは殺したいかどうかだ。

ふと、陰が差したのが分かって目を開ける。至近距離に臨也の端正な顔。

「好きなのに殺したいって変かな」
「…しらねえよ」
「考えもしないんだろう?君は」

静雄に覆いかぶさる臨也の後ろは青空だ。静雄はその青さが愛しい。
そしてその青空を隔てる目の前の男に怒りを覚える。

「退けよ」
「シズちゃん」
「考えてるさ」

お前の殺し方を。

そう言ってやると臨也は笑ったようだ。
ゆっくりと唇が下りて来て、唇が重なった。

ああ、もう。
キスよりはナイフの方がマシだ。

静雄はそう思いながら、臨也の首に腕を回した。


2010/12/02 22:49
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