1.5

これの番外編みたいな。






包帯を巻き終わり、新羅は軽く溜息を吐いた。
いくら静雄が軽くても、寝ている人間の体を起こして包帯を巻くのは重労働だ。
静雄はまるで死んだように動かない。時折、長い睫毛がぴくりと動き、寝息で胸が揺れる。それ以外はまるで人形みたいだった。
「静雄の場合、傷口は問題ないんだけど、出血が心配だなあ」
「意識を失ってるのもそのせい?」
臨也が腕を組んでベッドの傍らに立つ。手を伸ばし、優しく静雄の髪を撫でた。
「多分ね。まあ目が覚めたら栄養があるものでも食べさせてあげて」
新羅はそう言い、眼鏡の奥の目を細める。臨也の細い指先が、優しく静雄の頬をなぞるのを見ながら。
「…まるで恋人みたいだね」
「友人ではなく?」
「友達はそんな風に触れないよ」
「そうか」
喉奥で笑い声を低く漏らし、臨也は静雄から手を離す。
「ずっと殺し合って来たくせに、どうして静雄を助けたの」
治療道具を片付けながら、新羅は臨也に問う。血まみれのガーゼを袋に入れて縛った。
「死んだら困るからね」
血と同じくらいの赤い目を細め、臨也は口端を吊り上げる。
「好きだから?」
新羅は同じく唇を吊り上げて笑って見せた。
「そうだよ」
臨也はあっさりと肯定し、肩を竦める。その顔は照れも嫌悪もなく、ただ事実を認めただけだった。
「今更だろう?」
「まあね。恐らく知らないのは本人くらいじゃないかなあ」
静雄は鈍いところがあるからね、と新羅はけらけらと笑う。臨也はそれに僅かに苦笑した。
じゃあ帰るよ、と言う新羅を、臨也は玄関先まで見送ることにする。
「あんまり静雄を苦しめないでやってよ。意外に繊細だからさ」
扉に手を掛けて、新羅は臨也に一言釘を刺した。臨也はそれに、ただ黙って笑っているだけだ。
「じゃあね。君の願いが叶うように」
新羅は最後にそう言って、ゆっくりと部屋を出て行った。


(2010/11/30/15:53)
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