2.5

これの番外編みたいな。






「えーっと次は、」
臨也はインターネットサイトをプリントアウトした紙を見ながら呟いた。
「玉葱を炒める、か」
「俺、炒めない方がいい」
静雄が横から口を挟んで来る。
臨也はそれに眉を顰め、用紙と静雄の顔を見比べた。
「…ちょっと、レシピ通りにやりたいんだけど」
「……ちっ」
臨也の言葉に静雄は不満げに舌打ちをする。
大の男が二人、キッチンに向かって立っていた。二人とも真っ黒なエプロン姿で、正直似合ってはいない。
合挽肉、玉葱、パン粉、卵…。ハンバーグを作る為の材料が乱雑にキッチンの上に並んでいた。包丁やフライパン、フライ返し。どれも新品のもの。
「にしてもシズちゃんがみじん切り出来るなんて思わなかったな」
まな板の上に綺麗に刻まれた玉葱を見て、臨也は感心したような声を出す。
静雄はと言えば褒められてもちっとも嬉しそうではなく、さっきから鼻水を啜っている。玉葱を刻んだせいで目が痛いらしい。目は充血して真っ赤だ。
「目、まだ痛い…」
「あんまり擦っちゃ駄目だよ」
目をゴシゴシと擦る静雄の手を、臨也の手が掴む。静雄が鼻を赤くして涙目でこちらを見るのに、臨也は少しだけ笑った。
八年間の紆余曲折な付き合いの中で、静雄の泣き顔を見るのは初めてだ。それは酷く可愛らしかった為に、こっそり盗撮用のカメラでも仕込んでおくんだったな、と臨也は割と真剣に思う。
「お前も目が赤くなってんぞ」
静雄はやっと少し笑う。泣き顔を見られたのが気に食わないのか、静雄はずっと不機嫌だったのだ。
「見ていただけで俺も目が痛いよ」
臨也は苦笑して玉葱をフライパンで炒め始めた。料理はある程度できると言ってもハンバーグを一から作るのは初めてだ。レシピを何度も確認して悪戦苦闘。料理はやはり食べる専門がいい。
「玉葱ってなんで目にしみるんだろうな。なんか方法ねえのかな」
静雄はまだぶつぶつ言っている。まだその目は潤んでいて可愛らしい。
本当は玉葱を凍らせると良いと聞いたことがあったが臨也は黙っていた。
静雄の涙が見たかったから、なんてのは秘密だ。
「涙でしょっぱいハンバーグになったりしてね」
臨也がそう言って笑うと、
「つまんねえジョークだな」
なんて言って、静雄も声を上げて笑った。

その後ハンバーグは美味しく出来たけれど、二人はもう作ろうと言い出さなかった。


(2010/11/23/21:32)
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