傍観者


静雄の視線が窓の外へと動き、そこで止まった。
なんだろうと振り返ると、新羅も見慣れた隣のクラスの青年が校庭にいて。どうやら次の時間は体育らしい。
静雄は見なかったことにしたらしく、直ぐに視線を逸らす。眉間に皺を寄せて、明らかに不機嫌そうだったけれど。
その様子を見て、そんなに臨也が嫌いなのかと新羅は感心さえしてしまう。こんな遠くから、あんな数十人の中に居ても、天敵だけは分かるらしい。
予鈴が鳴って、静雄は自分の席に戻っていく。
何気なくまだ臨也を眺めていた新羅は、臨也が顔を上げ、真っ直ぐにこちらを見たのが分かった。
静雄を見ているのか。
と新羅が驚くと、臨也の方も直ぐに視線を外す。そしてそれ以降こちらを一度も見なかった。
宿敵や好敵手、仇、色々な呼び名があるけれど、まさに生きる為に邪魔な存在である『天敵』と言う言葉が二人にはぴったりなのかも知れない。
何て思いながら新羅は内心笑う。
でも実際はどちらかが死んだなら、きっと残された方は壊れてしまうんだろう。対となる物が失くなった時に。
つまり二人には共倒れか、相手を認めるか、の二つの選択肢しかない。
きっと二人は無意識のうちに均衡を望んでるだろうけど、永遠に均衡状態など有り得ない。
二人はどちらの選択肢を選ぶのかな。
新羅は少しだけ胸が痛む。二人共一応友人だから、できるのならば喪失は避けたい。けれど、

僕はただの傍観者なんだ。


07/18 17:49
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