24時間戦争コンビ




がしゃーん。
今日も今日とて学校の備品が破壊されて行く。
また窓ガラスが割れた。廊下には綺麗さっぱりガラスがない。アルミのサッシも歪んでしまっていた。これはまた全部取り替えだろう。
門田はもうこの学園の名物になった静雄と臨也の戦いを見ながら、深く溜息を吐いた。
「毎日毎日良く飽きないな」
「あの二人が陰でなんて呼ばれているか知ってる?」
新羅が笑って聞いてくるのに首を振ると、「24時間戦争コンビ」と教えてくれた。
なるほど、言い得て妙だ。
「しかしこう毎日学校の備品を壊されちゃ、いつか退学なるんじゃないのか…」
寧ろ、何故今まで無事なのだろうか。
「それはあれがでかいよね、多分」
新羅が指差した先には、こないだのテストの順位が張り出されていた。
一位、二位、三位とそれぞれ一点ずつしか差がなくて、順に岸谷新羅、折原臨也、平和島静雄の名前が書かれていた。
「……」
門田は黙り込む。何故あんなにいつも喧嘩して授業だってサボっているのに成績が良いのだろう。摩訶不思議だ。
「後はねえ…僕の推測だけど。臨也なんかは学校側の弱みとか握って脅してそうだよね。そう言うこと平気でするし」
新羅は恐ろしいことをさらりと言う。門田は身震いがした。
「でもそれなら静雄を退学させようとするのも簡単なんじゃないか?」
臨也にとっては。
邪魔者が居なくなって、臨也には好都合だろうに。
「あはは。臨也はそんなことしないよ。だって臨也は、」
がしゃーん!
突然目の前のガラスが割れた。
臨也が避けた机が窓に当たったらしい。
「悪い。大丈夫か?」
静雄が臨也を追うのをやめ、慌ててこちらへやって来る。
「大丈夫。門田くんに破片くらい刺さっても治療してあげるし」
にこにこと新羅が答えるのに、門田は眩暈がした。
「シズちゃん、俺はこっち」
廊下の向こうで声がする。顔を上げれば、臨也が口端を吊り上げて笑っていた。早くおいでよ、と静雄を挑発して。
静雄はそれに舌打ちをし、臨也を追って駆け出す。臨也の笑い声が校舎に響いた。
「…追いかけっこを楽しんでるってことか?」
門田がそれを見て、ぽつりと言う。
静雄を退学させたりまでは追い込まないのは、口で言うほど臨也は静雄を嫌っていないからか。
「うーん、もっと根が深いかも」
新羅は僅かに首を傾げて、少し困ったような顔をする。
「臨也は静雄が大好きだからね」
新羅はそう言って笑った。


101025 09:34
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