昼寝




眠い、と突然言い出して、臨也が倒れ込んで来た。芝生に座る静雄の膝上に。
それを見ていた門田はピシッと固まり、新羅はにこにこと笑う。
当の本人の静雄は、ちらっと臨也に視線を落とし、直ぐに興味を無くしたように牛乳パックを啜った。
秋の麗らかな天気。昼休みの中庭には四人以外誰もいない。犬猿の仲である二人が一緒にいるのを見て、他の生徒はいなくなってしまった。
臨也は本当に寝てしまったらしく、静雄の膝上で全く動かない。静雄はズズズズズ…とパックを飲み干した。
「もうすぐ昼休み終わるよ」
ごちそうさま、と両手を合わせて新羅は弁当を片付ける。
「臨也、起こすか?」
門田は困ったような顔をして、静雄を見遣った。さっきまで喧嘩の寸前まで騒いでいたのに、突然のこの雰囲気についていけない。
新羅は慣れっこらしく、そんな門田を見て笑ってる。
「ほっとけばいい」
俺はまだここにいるから。
静雄は不機嫌な顔でそう言い、空を仰いだ。
新羅はそれに立ち上がり、さっさと校舎へ戻って行く。門田も慌ててその後を追った。
遠くで昼休みが終わる鐘が鳴る。
静雄はただずっと空を見上げていた。青い空に、流れる雲が早い。
顔を下げたら臨也の寝顔が目に入る。だから静雄は下を見ることが出来ず、ただ空を見上げていた。時折吹く風が、少しだけ冷たい。
「寒い?」
僅かに静雄が身じろぎしたのか分かったのか、臨也が不意に口を開く。
「別に」
やっぱり起きてたのか、と思いながら、静雄は答えた。空を見上げたまま。
臨也が少し体を起こし、静雄の腰に抱き着いて来た。
静雄はそれに驚き、思わず臨也に視線を落とす。
「おい」
「あったかいだろう?」
くぐもった低い笑い声を出して、臨也は静雄を見上げて来る。
臨也の耳が静雄の心臓に触れた。
「鼓動が早いね」
俺と同じくらいだ、と臨也は言って、また顔を上げる。静雄はそれを黙って見下ろした。
臨也の顔が近付いて来る。吐息が頬に触れ、静雄はゆっくり目を閉じる。
臨也の柔らかな唇が重なった。


101023 13:20
×
- ナノ -