▼吃驚仰天


※4/2〜4/3にMEMOに書いていたもの。ギャグです。




僕には困った友人が二人いる。
一人は金髪に凶悪な顔をした(無愛想なだけだけど)、池袋最強と呼ばれる借金の取立屋。
一人は顔は綺麗だけど(本当に顔だけだ)、反吐が出るくらい性格が破綻している新宿の情報屋。
この二人はそれはそれは仲が悪く、『水と油』なんていう言葉だけでは表現できないくらいだ。例えばそう、火に油を注ぐとか言うけれど、本当に火と油かも知れない。一緒に居れば火の勢いが大きくなり、周囲に飛び火する。周りも巻き込んで大火事になる。つまりはそんな感じ。要するに周りは大迷惑ってこと!

「さっきから何をブツブツ言ってんだ?」
金髪の青年──静雄くんは、胡散臭そうに僕を見た。それこそ虫けらを見るみたいな目で。全く本当に酷い友人だなあと思う。
「いやあ、別に。この世は諸行無常だと思ってさ」
「ちっとも意味がわかんねえよ。それより早く治療しろよ」
高尚な答えにこの仕打ち。僕はこれ以上静雄に何か言うのを諦めて、血が出ている腕を消毒する作業に集中した。治療なんかしなくったって、どうせ静雄はこんな傷は一日で跡形もなく消えてしまうのだ。まあ、それでも痛みはあるのだろうから、こんな傷を付けられたことには同情してしまうけど。そして静雄にこんなことをするのは一人しかおらず、相変わらずだなあと内心苦笑した。高校生の時から、何一つ変わっていないんだから。
真っ白な包帯を巻いてやれば、静雄は小さく息を吐いた。珍しい。疲れているのだろうか。
間近で見ると、静雄は意外に綺麗な顔をしている。長い睫毛、通った鼻筋、薄い唇。あの弟の兄なのだから、当然かも知れない。黙っていれば、だけれども。
「なあ、新羅」
その薄い唇が開き、不意に僕の名前を呼んだ。珍しく殊勝で、不機嫌な顔をしていない。何だか寂しそうな顔だ、と僕は思った。

「好きな奴が出来た」

静雄が告げたその一言は、僕が今まで生きて来た中で、一番衝撃的な言葉だった。


(2011/04/02)
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