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もともと少食の静雄が、最近はめっきり食事を摂らなくなった。どうやら夏バテらしい。
「あのさあ、いくら夏バテでもさ、アイスばっかり食べてるのは良くないよね」
臨也は目の前の空の容器を見て、軽く溜息を吐く。
静雄はそれに言い返す気も起きずに、ぐったりとテーブルに突っ伏していた。

真夏のとある日。
静雄が休日だと言うので臨也が家に遊びに来て見れば、本人は夏バテでダウン中だった。
もともと細い体をしているのが、更に痩せて見える。こんな体でいつもの力は出ないのかと思いきや、力は健全らしい。目の前でスプーンを折って見せてくれた。指の爪だけで。
「取り敢えずさ」
臨也はコンビニで買ってきた様々な弁当やサンドイッチをテーブルに並べた。
「食べてみなよ」
「嫌だ」
静雄はそれらを見て、心底嫌そうに顰めっ面をする。匂いを嗅ぐのも嫌だ、とそっぽを向いてしまった。
臨也はご飯をスプーンで掬い、静雄の口元に突き付ける。
「あーんしなよ。食べさせてあげるから」
「は?絶対嫌だ」
顔を僅かに赤くして、静雄は口を閉じる。への字になった口は食べないと言う意思表示なんだろう。
「栄養摂らないと駄目だよ。一口くらい食べなよ」
「いらねえ」
臨也が差し出して来るのに、静雄は見向きもしない。ぷいっと顔を背ける姿は、まるで子供だ。
「シズちゃん」
ふと臨也の声が急に真剣さを増して、静雄は思わず臨也を見遣った。
臨也は酷く真摯な目をし、真っ直ぐに静雄を見つめている。

「好きだよ」

不意に告げられた愛の言葉に、静雄はぽかんとなった。
驚きで開かれた口に、臨也はスプーンを突っ込む。
「!、…っ」
無理矢理口に入れられ、静雄は咳込みそうになった。
「噛んで」
臨也に優しい声色で言われ、静雄はそれを咀嚼する。
「飲んで」
そして言われるままに、それを嚥下した。
「よく出来ました」
楽しげに笑う臨也に、静雄は睨みつける。
「嘘ついてまで食わせて楽しいかよ」
「嘘じゃないし」
臨也はまた一口分をスプーンに掬った。
「食べないならまた言うよ?ほら、あーんして」
悪戯っぽく笑いながら、臨也はまた差し出して来る。
静雄はそれに赤い顔をして舌打ちし、渋々と口を開けた。



なつめゆず様リクエスト 夏バテしてぐったりして る静雄に食事を強要する臨也
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