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好きかと問われれば嫌いと答えた。
嫌いかと問われればそうだと答えた。
はは、っと臨也がその赤い双眸を細めて笑う。
「酷いなあ、シズちゃんは」
ちっとも堪えてない癖に、ひどい、なんて言う。嫌いだなんて嘘なのを、知っている癖に。
口づけられ、押し倒されて、衣服を剥がされてゆく。一枚一枚ゆっくりと。
暗闇に響く笑い声。静雄は臨也のこの声も嫌いだ。明かりをつけないこの部屋で、静雄は臨也に裸体を晒された。
白く細い指先が、髪の毛を梳いていく。そのまま頬を撫でられて、また口づけられる。
好きだよ、と。
甘い声で囁かれるのに、静雄はびくりと体が震えた。耳元に熱い吐息が触れる。そのまま耳たぶを甘噛みされて、舌が穴に入り込む。くちゅっと濡れた音がした。
「俺ばっかり言ってるから悔しいなあ」
ふふ、とちっとも悔しそうじゃない顔で、臨也は笑う。
「言ってよ」
臨也の手が内股を撫でるのに、静雄の体はぴくりと跳ねた。
「一度でいいから」
唇が鎖骨を伝い、胸元へ下りて行く。臨也の指輪が冷たく肌に当たり、静雄の肌は粟立った。
「好きって言って?」
口角を吊り上げて、臨也は静雄を見下ろす。赤い双眸が少しだけ真面目なのに、静雄はやっと気付いた。
静雄は腕を伸ばして臨也の衣服を掴む。こちらは裸なのに、臨也がまだ衣服を着ているのが気に入らない。
静雄が自身の服を脱がせ始めるのを、臨也は好きにさせていた。
「シズちゃん」
臨也が名を呼ぶ。熱く掠れた声で。
好きだなんて口にしなくても、その声と眼差しで静雄は分かっているのに。
「俺のこと、好き?」
確認をしないと不安なのだろうか。この常に余裕そうな男でも。
静雄は臨也の衣服を全て剥ぎ取ると、その細い首に腕を回す。直接感じる体温は、酷く熱い。
「臨也」
静雄は臨也の耳元に唇を近付ける。微かに臨也のコロンの香りがした。
好きだ。好きだ。好きだ。俺はお前が好きだよ。
世界で一番愛してる。
けれど、

「嫌いだ」

そう言ってやる。
俺はお前が嫌いだと。


静雄の言葉に、臨也はまた笑った。



全裸待機様リクエスト 頑張って静雄に好きって言わせようとする臨也さん。臨也さんは割と好き好き言えそうなので、自分ばかり言って悔しいなあ、一度でもいいから言わせてみてえなあ、みたいな感じの。
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