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「シズちゃんってさ、なんであんなに意固地なのかなぁ」
臨也は軽く溜息を吐いて、頬杖をつく。
「静雄が素直なら素直で、ちょっと気持ち悪いと思うよ」
新羅は相槌を打ちながら、読んでいる文庫から窓の外を見た。
教室から見える夕陽は綺麗だ。赤く輝いた空がビルの群れを照らしている。
もうそろそろ帰ろうか。セルティが家で待っているかも知れない。
「素直なシズちゃんなんて確かに想像つかないな。まあ素直じゃないとこが可愛らしいんだけど」
臨也がさらりと言うのに、新羅は少し驚いたようだ。
「臨也が惚気を言うなんて珍しいね」
「そうかな。まあ事実だし」
臨也は全くなんとも思っていないようだった。照れでもしたら可愛いげあるのになぁと新羅は思って、それはそれで気持ち悪いだろうと考えた。
「こないだ家に遊びに行ったんだけど」
「静雄んち?」
「そう。誕生日に俺、花をあげたじゃない。ちゃんとドライフラワーになってた」
臨也の話を聞きながら新羅は思い出す。そういえばそんな時もあったなぁ。あれは静雄の誕生日だから1月か。
「静雄は確かにそういうのとっておきそうだね」
「可愛いよね、そういうとこ」
臨也はあくまでも真顔だ。
新羅は少し居心地が悪くなってきた。
「結構顔も綺麗だからさ、赤くなったりされると本気で可愛いんだよね。目も潤んだりしたらヤバイ。かなりヤバイ」
「あのさ、臨也…」
「あんな見た目で子供舌なところとかさ。プリンとか大好きだし、甘い食べ物とか大好きみたいなんだよね」
「僕そろそろ帰…」
「でも結局一番は性格かなぁ。うん、やっぱりたまに素直なくらいがいいかもね。ツンデレって言うのかな、あれ」
新羅が臨也の惚気に閉口し始めた頃、ガラッと教室の扉が開いて本人が入って来た。
ぴたっと臨也の口が噤まれる。
静雄は顔を真っ赤にしながら、中に入って来た。自分の席に着くまでに、がたがたと他の机にぶつかって歩く。
明らかな静雄の挙動不審な態度に、臨也と新羅はぽかんとした。
「シズちゃん…」
「静雄…」
聞いてたんだね…。
臨也はそれに、にぃっと口端を吊り上げる。
「あー、もう。シズちゃんは可愛いなぁ」
あははっと笑い声を上げる臨也に、即座に机が飛んできた。照れ隠しで机が飛んで来るなんて本当に静雄くらいだろう。
「ま、僕は惚気を聞かずにすんだよ」
新羅は助かった、と大袈裟に肩を竦める。臨也の惚気は無自覚で、それにちっともつまらない。
どったんばったんと机が飛び交う教室から抜け出して、新羅はさっさと家路につくことにした。家では愛しの彼女が待っているのだから!


じゃむ様リクエスト  臨也が惚気話を(新羅あたりに)してるのをたまたま立ち聞きみたいになった静雄がめちゃめちゃ挙動不審になる
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