PSYCHEDELIC





※注意。PSYCHEの続きみたいなもの。


ああ、また喧嘩している。
窓から見える空があっという間に雷雨になった。
ピシッと空気が震え、静雄は胸を押さえた。痛い。
きっと精神である自分の体に傷がまた出来た。何カ所も。
カシャッと静雄を繋ぐ鎖が重くなる。また束縛が強くなった。
外はずっと土砂降りだ。
頬に痛みが走り、思わず床を見る。真っ白な床に、真っ赤な血が広がった。
『静雄』の心にまた傷がついてしまった。静雄はそれが、とても悲しい。
…臨也。
こないだ会ったのが、もうずっと昔に感じる。
静雄は鎖を引きずって、部屋の扉を見た。扉には鍵がかかっている。何個も何個も。数え切れない鍵。
これを開けるのは相当大変だろう。鍵を開けるのは、『臨也』にしか出来ないのに。
静雄は耳を塞ぐヘッドフォンを手で押さえた。耳を澄ましても、何も聴こえない。
臨也、臨也、臨也。
臨也の声が聞きたい。
苦しい。助けて。
何故『臨也』は『静雄』を傷つけるのだろう。お互い様なのは知っている。けれど静雄にとって『静雄』は理解できるが、『臨也』のことは理解ができない。
早く臨也に会いたい。
静雄は頬から流れ落ちる血を拭った。
ガチャン!また鍵が増えた音がする。
静雄は知っている。『静雄』はこうやって心に鍵を増やすけれど、この鍵を開けて欲しがっている。きっと『臨也』に。
血が止まり始めた。ショックから立ち直ったのだろう。
臨也…。
静雄は痛みに堪えながら、空を見上げる。雨は少しだけおさまって来ていた。
痛い、痛い、痛い、痛い。
早く鍵を開けて、会いに来て。

2010/1030/23:34 



冷えたコンクリートの部屋だ。壁も床も天井もグレーだった。窓はあるけど曇りガラスで、決して外から中は見えない。
壁際には小さなテレビが一台置いてある。今は電波が悪いのか、ただの砂嵐しか映っていなかった。ノイズが煩い。
冷たい床には何か文字の書いた紙がたくさん落ちていた。見たこともない言語や数式が羅列されている。
ジグソーパズルや、将棋盤、チェス盤、トランプ…様々な遊び道具が、床に投げ出されている。静雄の何もない真っ白な部屋とは随分と違っていた。
臨也はぼんやりと、そんな部屋の床に座り込んでいる。
ピンクのコードを弄びながら、臨也は床にポタポタと落ちた血を見ていた。
きっとあちらはもっと血が出ているだろう。『臨也』はそう言う男だ。受けた傷は倍に返す。
臨也の足につけられた鎖は細く、それは今にも外れそうで決して外れない。こんな男のどこがいいのだろう、『静雄』は。
静雄の傷は大丈夫だろうか。次はいつ癒してあげられるのだろう。
臨也は血を拭いもせずに、床に散らばった小さな紙きれを見ていた。
よく見ればそれは紙ではなく写真だった。『静雄』の写真。それは何枚もあり、ナイフで傷つけたような跡がある。粉々に破かれたのもあった。臨也はそれを手にし、ジグソーパズルのように断片を合わせてゆく。
この感情を捨てられなくて苦しむ『臨也』を、臨也は愛しく思う。
臨也は鎖を引きずって扉まで歩いた。
扉は大きく、分厚い。『静雄』に比べたら断然少ないけれど、そこには鍵がかかっている。
…シズちゃん…。
『臨也』がこの鍵を外さなければ、臨也はここから出れない。静雄に会いたいのに、邪魔をするのはいつも『臨也』だ。なんて矛盾なんだろう。
血が流れ落ちるのが止まった。鈍い痛みが臨也の体を蝕む。
こんな痛み、どうってことない。静雄の方が絶対に痛いはずだ。きっと今も痛がって、助けを呼んでいるのだろう。
会いたい。
ずっとずっと一緒にいたいのに。お互いそう思っているのに。何故叶わないのだろう。
人間は愚かだ。


2010/1031/13:08
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