好きだから。





腕を引かれ、そのまま押し倒された。真っ白で清潔なシーツは、少しだけ冷たい。
静雄は燃えるような目で、自分を押し倒す男を睨んでいる。臨也はそれに、唇を歪めて笑って見せた。
「そんな目で睨んでも駄目だよ」
白く華奢な指が伸びてきて、静雄のワイシャツをそのまま左右に引き裂く。ボタンが飛び散り、コロコロとフローリングに転げ落ちた。
現れた白い肌に、臨也はわざとゆっくりと手を這わせる。臨也の冷たい指先に静雄は体を震わせた。
「傷一つないね。さすがだなあ」
臨也は感心したようにそう言い、薄く筋肉がついた腹筋を撫でる。思っていたよりも筋肉質ではないようだ。この細身の体であんな力が出せるのだから、人間としてはまさに規格外だろう。
ベルトに手を掛けようとした臨也の手を、不意に静雄が掴んだ。
「何?」
臨也の片方の眉が吊り上がる。
「本当にすんのかよ…」
静雄は困ったように臨也を見上げた。さっきまで殺意に満ちていた瞳は、今は困惑の色の方が濃い。
「うん」
臨也は笑う。酷く楽しそうに。静雄はそれに、小さく舌打ちをする。
「何で」
どうして。
どうして、こんなこと。
「どうして?」
臨也は静雄に手首を捕まれたまま、ベルトを素早く引き抜いた。それを無造作に床へと放り投げる。
「どうしてなんて、今更だ」
自嘲するように笑って、臨也は静雄に顔を近づけた。吐息が触れる距離まで。

「君が好きだからだよ」


101017 09:52
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